2026年1月号掲載

箴言集

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著者紹介

概要

フランス貴族として動乱と変革の17世紀を生きたラ・ロシュフコー公爵。彼の代表作『箴言集』は、人間の本性や自己愛を鋭く描き出した言葉に満ちている。「我々の美徳とは、たいていの場合、偽装された悪徳にほかならない」。この有名な一句をはじめ、彼の残した箴言の数々は、300年以上を経た今も、私たちの心に深く刺さる。

要約

道徳的考察

我々の美徳とは、たいていの場合、
偽装された悪徳にほかならない。

  • ・情熱は、しばしば、どんなに賢い人間でも愚かにするし、どんなに愚かな人間でも賢くする。
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  • ・情念は、往々にして、自分とは正反対の情念を生み出す。貪欲が時に浪費癖を生み、浪費癖が貪欲を生む。人はしばしば、弱いから強情になり、臆病だから大胆になる。
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  • ・我々は誰も、他人の不幸を耐え忍ぶには十分な力を持っている。
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  • ・過ちを犯した人たちを我々が叱責するのは、善意からというよりも、むしろ傲慢からである。我々が彼らを叱るのは、彼らを改めさせるためというよりも、自分自身はそうした過ちを免れていることを彼らに納得させるためなのだ。
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  • ・私欲はあらゆる種類の言葉をしゃべるばかりか、あらゆる種類の人物を、まったく無欲な人物をさえ、演じる。
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  • ・小事にこだわりすぎる人間は、往々にして、大事を成し遂げることができない。
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  • ・我々は、自分の理性が命ずるままに生きようとしても、それだけの力がない。
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  • ・本当の喜びは、好きになることにあるのであって、事物の中にあるのではない。人が幸福になるのは、自分が好きなものを持つことによってであり、他人が好ましいと思うものを持つことによってではない。
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  • ・人は誰も、当人が想像するほど、幸福でもなければ不幸でもない。
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  • ・世の人気者を憎むのは、自分が人気に執着しているからにほかならない。人気者を軽蔑することで、人気を得られない恨みが慰められ、和らげられる。我々が人気者を称賛しようとしないのは、世間の称賛の的になっているものを彼らから奪い取ることができないからである。
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  • ・人はよく大事業を成し遂げたと自慢するが、それは、たいていの場合、遠大な計画の結実などではなく、偶然の産物にすぎないのだ。
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  • ・どんなに不幸な出来事でも、賢い人間なら、そこからなんらかの利得を引き出すが、どんなに幸運な出来事でも、うかつな人間は、それを禍にしてしまう。
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  • ・人の幸と不幸は、運にも左右されるが、その人間の気質にも左右される。
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  • ・ひとたび愛し合わなくなると、かつて愛し合ったことを恥ずかしいと思わない者はほとんどいない。
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  • ・恋も、火と同じように、たえずかき立てられていないと、生き続けられない。それゆえ恋は、期待したり、心配したりすることをやめると、じきに死んでしまう。
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  • ・真実の愛とは、霊の出現のようなものである。誰もがそれを話題にするが、実際に見た人はめったにいない。
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  • ・沈黙は、自信のない者がわが身を守るための最も安全な方法である。
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  • ・自分よりも権勢のある人たちを本当に愛していると思い込むことがよくある。とはいえ、そんな友情は欲得ずくにすぎない。我々が彼らに奉仕するのは彼らの役に立ちたいからではなく、彼らから何かをせしめたいからなのだ。
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  • ・我々の不信は、相手の裏切りを正当化する。
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  • ・人間は、互いに騙され合っていなければ、長く付き合ってはいけないだろう。
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  • ・老人たちが教訓を垂れるのが好きなのは、もはや悪い手本を示すことができなくなった自分を慰めるためである。
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  • ・知性はいつも心に騙される。
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  • ・血気盛んな若者は、自分の好みを次々に変える。老人が好みを変えないのは惰性でしかない。
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  • ・忠告ほど、人が気前よく与えるものはほかにない。
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  • ・女を愛すれば愛するほど、その愛は憎しみに近づく。
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  • ・知性の欠陥は、老いるに従って目立つようになる。ちょうど顔の欠点と同じように。
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  • ・よい結婚はあるが、甘美な結婚はどこにもない。
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  • ・自分でも気づかぬまま、自分を騙すのはたやすいが、人に気づかれないまま、人を騙すのは難しい。
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  • ・我々は、他人に自分を偽ることにすっかり慣れているものだから、最後には、自分に対しても自分を偽ることになる。
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  • ・人がこっけいに見えるのは、当人が持っている品性のせいではなく、持ってもいない品性を持っているかのようにふるまうからである。
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  • ・我々が他人の長所を褒めそやすのは、純粋に他人の価値を評価してというよりも、むしろ我々自身の判断力を評価してもらいたいと思ってのことである。それゆえ、我々が他者を褒めているように見える時でも、実は自分を褒めてもらいたがっているのだ。
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  • ・我々が他人を褒めるのは、たいてい、褒められたいという気持ちからでしかない。
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  • ・人から与えられた称賛にふさわしくありたいという願いは、我々の美徳を高める。知性、勇気、美しさに与えられた称賛は、それらを養い育てるのに役立つ。
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  • ・他人から支配されないようにするのは、他人を支配するより難しい。
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  • ・利口ぶりたい人間は、たいてい利口にはなれない。
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  • ・誰の力を借りなくともやっていけると思い込んでいる人は、まったく間違っている。だが、自分は社会に必要不可欠な人間だと思い込んでいる人は、それ以上に間違っている。
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  • ・人間は、たいていの場合、人気や運のよさによってしか評価されない。
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  • ・完全な勇猛心とは、人前でならやれることを、誰ひとり見ていなくとも、やることにある。
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  • ・偽善とは、悪徳が美徳に捧げる賛辞である。
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  • ・それ自体において不可能だという物事はめったにない。それを実行に移す手段はあるのに、最後までやり遂げようという熱意が欠けているのだ。
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  • ・最高の才覚とは、物事の値打ちをよく知っているということにある。
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  • ・寛大さと見えるものも、たいていの場合、小さな利益は無視して、大きな利益をせしめようという野心の偽装にほかならない。
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  • ・恋の喜びは愛することにある。それゆえ、恋において、人が幸福であるのは、自分が抱く情熱によってであって、自分が相手に抱かせる情熱によってではない。
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  • ・気前のよさと言われているものは、たいていの場合、与えることに快感を覚える虚栄心にほかならない。つまり我々は、自分が与えるもの以上に、与えることを愛しているのだ。
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  • ・よく調べもせずに、悪をたやすく信じるのは、傲慢と怠惰のせいである。人はたいてい、罪人捜しには熱心だが、罪そのものを詳しく調べようとはしない。
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  • ・自分がなす悪をすべて自覚するほど聡明な人間はめったにいない。
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  • ・知性よりも、むしろ気質の方に、多くの欠陥がある。
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  • ・人間の価値にも、果物と同じように、旬というものがある。
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  • ・たいていの人が示す感謝の念とは、もっと大きな恩恵にあずかりたいというひそかな欲望にすぎない。
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  • ・財産などいらないという人はずいぶんいるが、それを他者に与えようという人はほとんどいない。
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  • ・恋人同士がいつも一緒にいて少しも飽きないのは、彼らがそれぞれに自分のことばかりしゃべっているからである。
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  • ・普通、我々が自分の心の底を友人たちに明かそうとしないのは、友人たちを信用しないからというよりも、自分自身が信用できないからである。
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  • ・軽蔑されるのを恐れているのは、もともと軽蔑すべき人間たちだけである。
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  • ・我々が小さな欠点を打ち明けるのは、大きな欠点はないと思わせるためである。
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  • ・人は、愛している限りにおいて、相手を許す。
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  • ・我々は、自分と意見を同じくする者は別として、良識ある人間にはめったにお目にかからない。
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  • ・他者を騙したあげくに、自分まで騙してしまう涙もある。
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  • ・他人の虚栄が耐えがたく思われるのは、それが我々自身の虚栄心を傷つけるからである。
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  • ・健康と同じように、運も慎重に管理しなければならない。運がよい時には、それを大いに楽しみ、運が悪い時には、じっと辛抱すること、そして、どうしても必要な場合は除いて、荒療治はしないことが肝要である。
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  • ・愛する人に騙されたままでいる方が、騙されたことに気づくよりも不幸ではないこともある。
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  • ・かつて好青年であった老人たちが物笑いの種になる最も危険な罠は、自分たちがもうそうではないのを忘れることである。
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  • ・我々は、自分が実際に持っている欠点とは正反対の欠点を自慢したがる。それゆえ、気弱な人間は頑固であることを自慢する。
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  • ・恋も終わりに近づくと、老齢と同じく、まだ生きているのは苦しむためで、もはや楽しむためではない。
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  • ・頭のいい馬鹿ほど、始末の悪い馬鹿はいない。

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