2026年1月号掲載

ニッポンの移民 ――増え続ける外国人とどう向き合うか

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著者紹介

概要

近頃、日本に移り住む外国人が増えている。こうした人たちに対し、「社会の治安を乱す」「医療の“タダ乗り”を狙っている」など、懸念する声がある。果たして実態はどうなのか。移民研究の第一人者が、国際移住の動向や日本の移民政策について述べる。エビデンスに基づく考察は、今、社会に広がる不安を和らげてくれるだろう。

要約

増え続ける外国人

 日本で増え続ける外国人に対する懸念が強まっている。その背景には「静かな日本侵略」が進んでいるという危機意識 ―― 犯罪や迷惑行為、日本の公的医療保険制度を狙って多数の外国人が移住してきているといったもの ―― がある。

 こういった荒唐無稽な話題が時に信じられてしまうのは、移民に関する知識が乏しいからだ。

 以下では、国際移住の動向や移民政策の基本などを、データを用いてわかりやすく示し、急速に広まる「不安」を少しでも取り除いていきたい。

2070年には10人に1人が外国人に

 2023年、国立社会保障・人口問題研究所は「日本の将来推計人口令和5年推計」を公表した。同推計によれば、2070年には日本の総人口が約8700万人になるとともに、そのうち約939万人、割合にして10.8%が外国人によって占められる。

 2024年末時点の外国人人口が377万人(3.0%)であることを考えると、約2.5倍の増加となる。

 こうした変化は日本社会にどんな影響をもたらすのか。それを検証するには、国際比較が有効だ。

 OECDによると、先進国における外国人割合の平均は14.7%。ドイツ、フランス、英国、米国などは10~18%である。日本は3.0%。仮に今後、先述したように、外国人割合が10.8%となった場合でも、先進国の平均値(14.7%)と比較すると、まだ3%ポイント強ほど低い水準にとどまる。

隠された「人口ボーナス」としての外国人

 現在、米国や西欧諸国において、移民人口の増加が社会を分断する大きな政治的イシューとなっている。こうした動きを捉え、「欧米の轍を踏むな」といった警鐘を鳴らす政治家や有識者も多い。

 欧米諸国も今後、本格的な少子高齢化を迎える。だが、欧州では移民排斥を公約に掲げる政党が躍進し、米国では移民排斥などを掲げる第2次トランプ政権が成立した。これらの国が今後、積極的な移民受け入れに舵を切ることは極めて困難だ。つまり、欧米諸国は今後、少子高齢化を生産性の上昇などの構造改革のみで乗り切る必要がある。

 一方、これまで移民の受け入れを大々的に行わなかった日本は、総人口割合で約10%超の受け入れ余力がある。これは今後、少子高齢化を迎える先進国の中で、日本だけに与えられた政策オプション ――「隠された人口ボーナス」といえる。

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