2025年10月号掲載
Rich Life まだ知らない景色が人生を豊かにする
Original Title :LIFE IN THREE DIMENSIONS:How Curiosity,Exploration, and Experience Make a Fuller,Better Life (2025年刊)
著者紹介
概要
「幸福」と「人生の意味」。このどちらかを追求することが、良い人生を送るカギだといわれる。だが、第3の道がある。「心理的な豊かさ」だ。これは、新たな挑戦を楽しみ、変化や偶然、ネガティブな感情さえも受け入れることで得ることができる。この生き方について、心理学者が長年の研究とデータをもとに解説する。
要約
「良い人生」への道
良い人生とは何か?
心理学は、この問いについて研究してきた。
幸福な人生
アリストテレスによれば、「幸福」は究極の人生の目的だ。これは世界中の多くの人々が共有する目標でもある。心理学者のエド・ディナー教授の調査によると、回答者の69%が、お金や愛情、健康よりも、幸福を「非常に重要」と評価した。幸福な人はより健康で、他者への思いやりもあるとの研究もあり、幸福になる事は価値ある目標だ。
だが、幸福を追い求めることには問題点もある。
まず、幸せでなければならないというプレッシャーがあるため、悲しみ、怒り、苦悩を感じることは望ましくないとされがちだ。しかし、ネガティブな感情を避けることはできない。誰かに批判された時、嫌な気分になるのはごく自然なことだ。
次に、幸福を求め過ぎなければ、手に入れるのがよりたやすくなることだ。もしあなたが、常に最高の選択肢を追求するのではなく、「ほどほど満足」を受け入れれば、自分の決断に満足し、幸せでいる可能性はより高くなる。
しかし、「ほどほど満足」志向には負の側面もある。例えば、現状に満足することで、必要な挑戦や自己成長をためらうようになる。
時には、心地良さや小さな喜びを超えた何かが、人生にはあるかもしれない。幸福だけが良い人生を送る唯一の方法ではないのだ。
意味のある人生
では、幸福な人生以外に、どんな良い人生があるのか?
米国の小説家のドナ・タートは、「たとえ自分の幸福を犠牲にしても、自分以外の人々を幸せにすること」と述べている。これは多くの学者が「意味のある人生」と呼ぶものだ。
言うまでもなく、意味のある人生は、無意味な人生よりもはるかに魅力的に映る。そのため、キャリア、宗教、社会的役割(例えば、親になること)、社会変革などを通じて何らかの生きがいを見つけるべきだと人々は口を揃える。