2025年10月号掲載
プロカウンセラーの 賢く怒る技術
著者紹介
概要
すぐにカッとなってキレてしまう。怒りを過度に抑えがちで、怒るべき時に怒れない…。そんな怒りの感情との付き合い方に悩む人に、「賢く怒る」方法を指南。怒りを単にネガティブな感情と捉えるのではなく、己を知り、人間関係をより良いものにする力として活かす。そのためのヒントを、経験豊富なプロのカウンセラーが説く。
要約
怒りの正体
怒りとの上手な付き合い方は、人が心豊かに生きていくために学ぶべき重要なスキルだ。
怒りの感情と上手く付き合うには、この感情に体験的に親しむと共に、知性を働かせて怒りの感情を適切に理解することが大事である。
「怒らない技術」と「怒る技術」
私は、「怒る技術」と「怒らない技術」は表裏一体であり、怒りと上手に付き合うには、その両方の技術が必要だと考えている。
怒りを抑え込んだり、怒りから注意を逸らしたりするスキルとともに、自分の中の怒りを見つめ、それを適切に表現するスキルを身につけるのだ。
例えば、車を運転するためには、上手にアクセルを踏む技術と、上手にブレーキを踏む技術の両方が必要で、最終的には両者をバランスよく使えることが望ましい。
それと同じように、怒りと上手に付き合って人生を建設的に生きるためには、怒りを「出す技術」と「抑える技術」の両方を統合して、バランスよく使えるよう学ぶことが必要なのだ。
怒りの感情をどう価値づけるか
心理学の知見に基づけば、あらゆる感情には適応的な価値がある。他の感情と同様に、怒りの感情そのものは基本的に悪いものではなく、意味があって発生するものだと考える。
そのことを踏まえた上で、最も基本的な怒りについて言えば、それは自分にとって大事なこと、大事なもの、大事な人などが、不当に侵害されていることを警告し、その不当な侵害を押し返すような行動へと動機づける感情である。
不条理に怒鳴り散らしている人の怒りでも、その人が体験してきたことを詳しく聞けば、わずかではあっても妥当と思える点が含まれている。
怒りの感情は、衝動的で暴力的な行動につながりやすいものであるが、単に有害なもの、とにかく抑え込めばそれでいいものではない。怒りを見つめ、その中に含まれる大事なメッセージを聞き取ることが必要である。