2025年7月号掲載

スティグリッツ 資本主義と自由

Original Title :THE ROAD TO FREEDOM:Economics and the Good Society (2024年刊)

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著者紹介

概要

「新自由主義」は破綻しつつある!? 市場は効率的だから、規制は不要。冷戦後、世界を席巻したこの経済システムに、ノーベル賞経済学者が異を唱えた。価格支配力を持つ企業が庶民を搾取している、超富裕層がメディアを支配し、自らに都合のよい世論を導いている…。規制なき社会の“失敗”を明かし、新たな枠組みを示す。

要約

新自由主義とは

 自由が危機に瀕している。

 アメリカの非営利組織フリーダム・ハウスが2022年に発表した報告書によると、現在、世界人口の80%が、独裁的な国や部分的な自由しかない国で暮らす。つまり、独立系の報道機関など、自由な社会にあるべきものが存在しない国である。

 私は、独裁的な体制よりも自由社会の方が、はるかに効果的に市民が望むものを提供できると信じている。だが、いくつかの重要な領域、とりわけ経済学の分野で、自由社会は失敗しつつある。

 この失敗の原因の一端は、自由に関する間違った考え方により、進むべき道を誤った点にある。

冷戦終了後の世界

 1991年に冷戦が終了すると、あらゆるものを国有化(要は支配)する社会主義/共産主義と、まったく束縛のない市場という二極化は過去のものになった、という幅広い合意が生まれた。

 政治経済学者のフランシス・フクヤマは、これを称賛し、経済システムや政治システムに関する見解は「正しい回答」へと収束したと主張した。その回答とは、市場経済と自由民主主義である。

 これらは、20世紀最後の四半世紀に発展し、「新自由主義」と呼ばれるようになった。

 この文脈における「自由」とは、規制などの政府介入からの自由を意味する。「新」という言葉で、何か新しい要素があることを主張したかったようだが、実際には、「市場に任せる」よう推奨した19世紀の自由主義とほとんど違いはない。

新自由主義の失敗

 最悪の結果となったのは、おそらくアメリカだ。どこよりも市場を信頼し、金融の自由化を極限まで推し進めた結果、2008年の金融破綻により、この75年で最大の景気後退を経験し、その経済危機を他の国々にまで輸出した。

 アメリカンドリームはもはや神話となり、他のどの先進国よりも、若者の将来の展望が親の収入や教育に左右されるようになった。こうした希望の喪失をはっきりと証明したのが、ドナルド・トランプの大統領選勝利である。

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