2025年7月号掲載
スティグリッツ 資本主義と自由
Original Title :THE ROAD TO FREEDOM:Economics and the Good Society (2024年刊)
- 著者
- 出版社
- 発行日2025年6月3日
- 定価3,080円
- ページ数507ページ
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著者紹介
概要
「新自由主義」は破綻しつつある!? 市場は効率的だから、規制は不要。冷戦後、世界を席巻したこの経済システムに、ノーベル賞経済学者が異を唱えた。価格支配力を持つ企業が庶民を搾取している、超富裕層がメディアを支配し、自らに都合のよい世論を導いている…。規制なき社会の“失敗”を明かし、新たな枠組みを示す。
要約
新自由主義とは
自由が危機に瀕している。
アメリカの非営利組織フリーダム・ハウスが2022年に発表した報告書によると、現在、世界人口の80%が、独裁的な国や部分的な自由しかない国で暮らす。つまり、独立系の報道機関など、自由な社会にあるべきものが存在しない国である。
私は、独裁的な体制よりも自由社会の方が、はるかに効果的に市民が望むものを提供できると信じている。だが、いくつかの重要な領域、とりわけ経済学の分野で、自由社会は失敗しつつある。
この失敗の原因の一端は、自由に関する間違った考え方により、進むべき道を誤った点にある。
冷戦終了後の世界
1991年に冷戦が終了すると、あらゆるものを国有化(要は支配)する社会主義/共産主義と、まったく束縛のない市場という二極化は過去のものになった、という幅広い合意が生まれた。
政治経済学者のフランシス・フクヤマは、これを称賛し、経済システムや政治システムに関する見解は「正しい回答」へと収束したと主張した。その回答とは、市場経済と自由民主主義である。
これらは、20世紀最後の四半世紀に発展し、「新自由主義」と呼ばれるようになった。
この文脈における「自由」とは、規制などの政府介入からの自由を意味する。「新」という言葉で、何か新しい要素があることを主張したかったようだが、実際には、「市場に任せる」よう推奨した19世紀の自由主義とほとんど違いはない。
新自由主義の失敗
この新自由主義の実験は、すでに40年に及んでいる。だが、成長の加速や生活水準の向上が幅広く行き渡るというバラ色の展望は、いまだ実証されていない。それどころか成長は鈍化し、機会は縮小し、成長が生み出した成果の圧倒的多くが最上層の人々の手に渡っている。
最悪の結果となったのは、おそらくアメリカだ。どこよりも市場を信頼し、金融の自由化を極限まで推し進めた結果、2008年の金融破綻により、この75年で最大の景気後退を経験し、その経済危機を他の国々にまで輸出した。
アメリカンドリームはもはや神話となり、他のどの先進国よりも、若者の将来の展望が親の収入や教育に左右されるようになった。こうした希望の喪失をはっきりと証明したのが、ドナルド・トランプの大統領選勝利である。