2024年8月号掲載
世界は見ている、 ここが日本の弱点
著者紹介
概要
今日、世界は「戦争」の時代に突入したといえる。ウクライナしかり、ガザしかり。日本も安穏とはしていられない。実は、この国には“弱点”が山積みだ。資質なき指導者、輸入頼みの食料や医薬品、自滅をもたらす専守防衛など、他国がつけ込む余地は多い。自国を守るために、私たちが知っておくべき問題の数々を元外交官が示す。
要約
「戦争」の時代の日本の弱点
世界は「戦争」の時代に突入した。
ロシアによるウクライナ侵攻は、「法の支配」という戦後の国際秩序を根底から覆し、ハマスによるイスラエル攻撃は、「力」と「力」の戦いに発展した。平和や民主主義という基本的価値は、いまや世界では通じなくなりつつある。
そんな時代にあって、日本人が自国を守るためにできることは何か。それは自国の「弱点」をしっかりと認識することである。例えば ――
資質なき人物が国の命運を握ることの危うさ
岸田文雄総理は「国家観がない」といわれる。国家観のないリーダーは国際政治では尊敬されず、能力がないとされ、国家的不利益をこうむる。
それだけではない。元々国家観がないリーダーは国民を不安にし、未来への展望を描けず、社会が揺れ動く。その先にあるのは絶望だ。
現在の日本において、総理の責任がいまほど重い時代はない。岸田総理と次のリーダーを志す政治家は、他国のリーダーから学んだ方がいい。
例えば、モディ首相率いるインドは、敵対する中国を意識した外交ネットワークには積極的に参加しつつも、ウクライナ侵攻では戦略的関係を有するロシアを非難することはしないという、国益に沿ったしたたかな外交を展開している。
国の指導的立場にある人は、モディ首相のように独自の立ち位置、判断という外交戦略が必要である。その戦略を自らの言葉で国民や世界に訴えかけるべきだ。
日本が国連の常任理事国に入れない理由
ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以来、国際連合(国連)の安全保障理事会(安保理)では、ロシアを常任理事国から外すべきである、という意見があると同時に、新たに常任理事国を追加すべきとの議論が高まっている。
日本も長年、常任理事国入りに名乗りをあげているが、果たせていない。その障壁の1つは、国連憲章の旧敵国に関する条項、いわゆる「旧敵国条項」に日本の国名が記載されていることだ。
旧敵国条項とは、第二次世界大戦における連合国の敵国(日本、ドイツ、イタリア、ブルガリア、ハンガリー、ルーマニア、フィンランド)が、国連で確定した事項に反したり、侵略行動等を起こした場合、国連加盟国は安保理の許可なしで軍事制裁を科すことができるというものだ。つまり、国連は旧敵国を永久に無法者と宣言しているのだ。