2024年1月号掲載

イスラムがヨーロッパ世界を創造した 歴史に探る「共存の道」

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著者紹介

概要

「ヨーロッパの発展は、イスラム文明抜きではあり得なかった」。そう指摘する著者が、文化や芸術、食などの分野でイスラムがいかに貢献してきたかを語る。欧州を代表するワインや大聖堂の建築様式に見られるその足跡。そして、イスラム教徒とキリスト・ユダヤ教徒が長きにわたって共存してきたという意外な歴史が紹介される。

要約

ヨーロッパの食文化を豊かにしたムスリム

 現在のヨーロッパ文化における基礎の1つは、イスラムの学術的成果や農業技術、工芸、食文化などにルーツをもつ。ヨーロッパの中世から近代までの発展は、イスラム文明の文化・社会的影響や遺産抜きではあり得なかった。

ヨーロッパとイスラムをつないだワイン

 例えばワイン。イスラムでは酒は禁じられているが、実際にはイランなどでは昔から飲酒やワインの生産が行われていた。ワインづくりの習慣は、紀元前4000年頃に中東で始まったとされる。古代文明の1つ、エーゲ文明が後退した後、地中海地域を支配したのはフェニキア人だった。「ワイン」という言葉は「ブドウを発酵させる」というフェニキア人の言葉から生まれたものだ。

 地中海地域の支配地域をフェニキア人から受け継いだローマ人は、ライン川やドナウ川流域、マルヌ川流域(ブルゴーニュ、ボルドーなどのワイン生産地)などにブドウ栽培をもち込んだ。

アラブ・ムスリムがスペインにもたらした果物栽培

 また、スペインにオリーブ栽培をもたらしたのはアラブ・ムスリム(イスラム教徒)たちだ。

 10世紀に活躍したアラブ人農業学者らの農学書を見ると、アラブ・イスラム世界からスペインにオリーブ、ザクロ、オレンジなどの農作物が伝わったことが示されている。

 スペインは土壌が肥沃で、水も豊富だった。ムスリムがもち込んだ農業技術で生産性が上がり、畜産でも大きな改善が見られた。これはスペインにおける「アラブの農業革命」とも形容される。

 ムスリムがスペインにもたらした食材の中で特筆すべきはコメだ。そのコメ栽培をムーア人(北西アフリカとイベリア半島のムスリム)たちは10世紀にスペインで始めたと考えられている。

 ムスリムがスペインの食文化に大きな影響を与えたことはスペイン語の語彙を見ても明らかだ。例えば、「a」から始まる食材の名称はムーア人がもたらしたもので、「arroz(米)」「aceite(油)」「aceituna(オリーブ)」などがある。

「シルクロード」と「十字軍」

 イスラムとヨーロッパの共存の歴史を知る上で欠かせないのが「シルクロード」と「十字軍」だ。

東西文明を結びつけたシルクロード

 イスラム世界がシルクロードに関わるようになったのは、宗教の誕生が契機だった。7世紀に誕生したイスラムの信仰の発展は、ムスリム共同体の組織的成長ももたらした。

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