2024年1月号掲載

人はどう老いるのか

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著者紹介

概要

誰にも必ず訪れる「死」。その時までどう年を重ね、老いていけばいいのか。長年、高齢者医療に携わる医師が、上手に、そして楽に老いるコツを語る。認知症予防として確実に有効なものはない、がん検診は無駄、死が迫ったら何もせずに受け入れる…。老いや死を迎える上で心得ておくべきことを示した、新しい「老い方」の教科書だ。

要約

認知症にだけはなりたくない人へ

 私は長年、高齢者医療に携わってきたおかげで、様々な老いのパターンを目にしてきた。多くの高齢者に接してきて、上手に楽に老いている人、下手に苦しく老いている人を見ていると、“老い”を失敗しない方法はあるような気がする。

認知症予防で有効なものは

 病気の中でも、特にこれだけはなりたくないと多くの人が思うのは、がんと認知症ではないか。がんは死ぬ危険性が高いし、認知症は自分がなくなるような恐怖があるから忌避される。

 認知症になりたくない人が何より知りたいのは、その予防法だろう。巷に流布する予防法は玉石混淆だ。医者が推奨するものにも驚くような予防法がある。「生き生きした生活を心がける」「家族や地域の人間関係を良くする」…。こんなことで本当に認知症の予防ができると思っているのか。

 魚に含まれるDHA(必須脂肪酸)や、赤ワインに含まれるポリフェノール(抗酸化物質)の摂取を勧めるものもある。だが、これらを多く摂ったら認知症が予防できるという保証はない。

 認知症という病気の本態は、いまだ明確にはわかっていない。つまり、認知症の予防として確実に有効なものはないというのが本当のところだ。

明晰であり続けることの悲劇

 それでも認知症にだけはなりたくないと、頑なに思い続ける人は少なくないだろう。では、認知症にならずに長生きをしたらどうなるのか?

 93歳で亡くなった私の母は、最後まで頭はしっかりしていた。その母が嘆くのには、したいこと、しなければならないことがたくさんあるのに、身体が言うことを聞いてくれないということだった。様々な気がかりがあるのに、思うようにできず、情けない思いをしていたのだ。

 妻と私が母の様子を見に行くと、いつも「世話をかけて申し訳ない」「忙しいのに時間を取らせてすまない」と、謝ってばかりいた。母も少し認知症になっていれば、これほどつらい現実に苛まれずに済むのに、と思わざるを得なかった。

医療幻想とは何か

 何事にもいい面と悪い面がある。ところが、医療者が医療のいい面しか語らないので、世間は「医療幻想」ともいうべき状態に陥っている。医療の進歩は素晴らしい、これまで治らなかった病気も治る、健診を受けておけば大丈夫…。

 医療者はネガティブな話は語りたがらない。しかし、医者同士の飲み会に行くと、世間にはとても聞かせられないような話が飛び出す。無駄な検査や治療は収益を上げるため、CTスキャンで浴びる放射線は恐ろしい、外科医だって夫婦喧嘩の後は手術の調子が悪い、がん検診は穴だらけ…。

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