2023年10月号掲載

堤未果のショック・ドクトリン 政府のやりたい放題から身を守る方法

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著者紹介

概要

テロや災害といった惨事の裏で、儲ける奴らがいる! 2007年、その手口を示す『ショック・ドクトリン』(ナオミ・クライン著)が世に出た。そして今、政府や巨大資本によるショック・ドクトリンはより大掛かりなものに。日本も例外ではない。コロナ禍の裏で政府が巧妙に進めた政策とは ―― 。国際ジャーナリストが実態を暴く。

要約

ショック・ドクトリン

 カナダ人ジャーナリストのナオミ・クラインが書いた『ショック・ドクトリン』という本がある。

 ショック・ドクトリンとは、テロや戦争、自然災害など、ショッキングな事件が起きた時、国民がパニックで思考停止している隙に、通常なら炎上するような新自由主義政策(規制緩和、民営化、社会保障切り捨て)を猛スピードでねじ込んで、国や国民の資産を合法的に略奪し、政府とお友達企業群が大儲けする手法を意味する。

 米中冷戦時代に、共産主義拡大を警戒していたアメリカの中央情報局(CIA)が、中国共産党の洗脳テクニックを研究したことが発端となり、生まれた手法である。

国民監視が合法化された「9.11」ショック

 例えば、2001年の「9.11同時多発テロ」。この9.11というショックな事件をきっかけに、アメリカは“テロ対策”という新しい予算枠を得て、軍需産業や民間軍事会社、諜報機関やセキュリティ業界などは、毎年エンドレスに税金を投入される安定した巨大利権を手にした。

 それだけではない。9.11はもう1つ、政府側にも巨大な権力をもたらした。

 ブッシュ大統領はすぐに非常事態宣言を発令し、それまでは違法だった、裁判所の令状なしの通信傍受が合法になった。さらに「愛国者法」という法律がスピード可決し、テロ対策の名の下に政府がいつでも電話、メールを傍受できるようになった。

 古今東西、為政者たちは、効率よく統治するために国民が何を考えているかを把握しようとしてきた。しかし、独裁国家でない限り、あからさまに監視などできない。それが、テロというショックによって、政府側に国民の個人情報を監視するドクトリンが、あっさりと合法化されたのだ。

 その数年後にFacebookやTwitter、YouTubeが開設されると、米当局はテロ対策を理由にそれらの企業にデータを出させ、国民や外国人の個人情報まで取るようになった。2013年にエドワード・スノーデンという元CIA職員がこのことを暴露した。さすがに国内外で問題になったものの、結局、2019年には再び法律を改正し、ますますやりたい放題が止まらない。

ワイドショーがスキャンダルを流すその裏で

 国民が知ったら間違いなく炎上するような大事な法改正がされる時に限って、なぜワイドショーは芸能人の薬物疑惑や不倫、不可解な殺人事件などセンセーショナルなスキャンダルを流すのか?

 例えば、旧統一教会問題から始まった現職大臣たちの辞任ドミノでワイドショーが一色になった時、任意のはずのマイナンバーカードを実質義務化するマイナ保険証への切り替え方針がいつの間にか決定していた。また、SNSとワイドショーが高市早苗大臣の捏造文書云々で沸いているその隙に、岸田文雄総理がこっそり実施したのは、外資を含む企業に日本の農地を売り渡す法改正だった。

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