2023年10月号掲載

Z世代のアメリカ

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著者紹介

概要

“強いアメリカ”が過去のものになりつつある。泥沼化するテロとの戦い、コロナ禍で露呈した社会保障の脆弱さ…。こうした綻びを見て育った若者たちが今、新しいアメリカを模索し、様々なアクションを起こしている。社会正義と国際協調を求めて声をあげ、自ら行動する。そんなZ世代の姿と、変わりゆくアメリカ社会を描き出す。

要約

例外主義の終わり

 「アメリカは、自分たちを政治的な啓蒙の中心とみなし、世界の大部分の人々にとっての教師とみなす傾向がある」 ―― 。

 これは、冷戦初期のアメリカ外交の基調に大きな影響を与えた外交官、ジョージ・F・ケナンの言葉だ。彼は、アメリカが民主主義や人権の「教師」を自負し、非西洋諸国に対し、その国の文化や歴史へ敬意を払うことなく一方的に介入する傾向に、強い違和感と警戒心を抱いていた。

 しかし今日私たちが目にしているのは、冷戦時代にケナンが危惧したのとは真逆の、自信を失い、対外介入に慎重になるアメリカだ。

「例外主義」を放棄した大統領

 その背景となっているのは、2001年の9.11同時多発テロ事件を受け、ジョージ・W・ブッシュ政権が始めた「テロとの戦い」とその帰結だ。20年超に及ぶそれは世界に多くの破壊と犠牲を生み、アメリカ経済や社会にも大きな負担となっている。

 テロとの戦いがもたらす疲弊は、ブッシュに続くバラク・オバマ政権の外交を決定的に方向づけた。その外交は、縮小するアメリカのパワーという現実と、国際秩序の盟主としてアメリカが果たすべき役割との折り合いを模索するものとなった。

 そうした盟主意識を完全に振り切ったのが、ドナルド・トランプ大統領だ。彼の就任演説で貫かれていたのは「弱くなったアメリカ」というネガティブな自国像である。そして彼は、今後は「アメリカ第一」でいかねばならないと宣言したのだ。

 ここから、トランプは「例外主義」を放棄した大統領ともいわれる。例外主義とは、アメリカは物質的・道義的に比類なき存在で、世界の安全や世界の人々の福利に対して特別な使命を負うという考えである。

例外主義に支えられた国際秩序の転換

 例外主義的な意識がどのような外交として表出するかは様々だが、歴史を見れば、その方向性は大きく言って2つだ。

 しかし、20世紀の2つの世界大戦を通じ、アメリカは世界秩序の維持に関心を持たざるを得なくなっていく。そこで、物質的にも道義的にも「例外」的に秀でているからこそ、アメリカは国際秩序の盟主として秩序の維持に努めなければならないという「国際主義」の論理が生まれていった。

 このようにアメリカ外交の歴史を、例外主義的意識から生み出された2つのパターンの表れの歴史として見た時、トランプ外交がこの歴史に重大な断絶をもたらすものであったことは明らかだ。その就任演説に色濃く表れていたのは、「普通の国」願望である。

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