2022年8月号掲載

ウイルス学者の責任

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著者紹介

概要

新型コロナ対策において、政府はウイルス学の「常識」を理解していなかった ―― 。30年以上にわたりウイルス研究に携わってきた著者は、こう指摘する。濃厚接触者の特定は無意味だった、人流抑制は最後の手段だった、子供はワクチンを打つべきでない…。ウイルスの専門家の視点で、コロナ禍から学ぶべき教訓を語る。

要約

国の過ち

 私は日本の大学や研究所、イギリスの大学でウイルスの研究を行ってきた。このため2019年に新型コロナウイルスが出現すると、すぐにウイルスの実態を見抜くことができ、日本がとるべき対策と将来を見通せた。

 だが、世の中はそれとはまったく異なる方向に向かい、社会は大混乱に陥った。

コロナウイルスとは

 コロナウイルスとは、ウイルスの外周にスパイクタンパク質という突起のようなものが出ているウイルスである。その形がコロナ(王冠)に似ていることから、コロナウイルスと呼ばれる。

 SARS(重症急性呼吸器症候群)ウイルスも、MERS(中東呼吸器症候群)ウイルスも、スパイクタンパク質を持つコロナウイルスである。

新しいウイルスはSARSと同じ種類だった

 2020年に入ると、新型コロナウイルスのRNA(リボ核酸)の配列(アデニン、グアニン、シトシン、ウラシルという4つの塩基の物質の並び方)が部分的に公開された。すぐにその配列を既存のウイルスと比較してみたところ、「SARSコロナウイルス」とほとんど同じ配列だった。

 そのため、「SARSの再来だ」と心配をした。SARSは致死性の高い感染症で、致死率は14~15%くらいとされている。

見えてきたウイルスの特徴

 2020年2月、ダイヤモンド・プリンセス号の一件が起こった。PCR検査をしてみると驚くほど陽性率が高く、乗員・乗客約3700人中、陽性者は700人以上で、陽性率は20%近くだった。

 SARS並みの10%くらいの致死率だとすると、70人くらいの人が亡くなってしまう。だがその後、感染者のうち、死者は13人と判明。致死率はSARSほど高くはなかった。乗員・乗客への検査の結果、無症状者が多いこともわかってきた。

浴びるウイルス量を100分の1にする

 1.7くらいなら、それほど大きな数字ではない。ちなみに、インフルエンザは2~3程度だ。

 基本再生産数が1.7くらいの感染力で致死率がSARSほど高くなければ、「知識で感染の広がりを止めることは可能」というのが私の見方だった。その時に考えたのが「100分の1作戦」である。

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