2020年7月号掲載

無駄だらけの社会保障

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概要

今日、多額の無駄な費用が、日本の社会保障財政を圧迫している。市販で買える薬を病院で処方してもらう、病院は入院期間を必要以上に伸ばす…。医療や介護の現場では、こうした無駄が放置されているのだ。本書は、膨大なデータの独自分析によって、社会保障の構造問題に切り込むとともに、財政危機を避ける方策を探る。

要約

そのクスリ、本当に必要ですか?

 かつて日本は社会保障の「優等生」だった。国民皆保険・国民皆年金を実現したのは1961年。1973年には老人医療費の無料化などを実現した。

 しかしその後、少子高齢化は想定以上に進んだ。バブル崩壊で経済は腰折れし、非正規社員が急増。当然、負担と給付のバランスは崩れる。

 驚異的な経済成長と出生率上昇が見込めない以上、負担を増やすか、給付を減らすかを考えなければならない。にもかかわらず、政治や行政の改革はいっこうに進まない。

店で買える薬を病院で処方してもらう理由

 少し喉が痛いから風邪薬をもらう、少し腰が痛いから湿布薬をもらう…。軽症なのに、病院で薬を処方してもらった経験は誰しもあるだろう。

 多くの人がドラッグストアで買える薬を、病院で処方してもらいたがる最大の理由は、「自己負担が軽くて済む」ことだ。75歳以上の後期高齢者は窓口負担が原則1割のため、自己負担はさらに小さい。問題は、自己負担以外の7~9割分を保険料と税金で賄っているということだ。公的保険財政や国の懐を痛めているのだ。

 市販薬があるのに、公的保険を使って処方されている薬はどれほどあるのか。厚生労働省のデータなどを基に算出した結果、例えば2016年度の処方額は5469億円にのぼることがわかった。

 このままでは医療費の膨張にブレーキがかからない。すべての薬を一律で保険適用とする今の制度を改め、代えがきかない新薬に財源を振り向ける思い切った制度改革が必要だ。

 法政大学の小黒一正教授は「改革を放置したままでは、本来は公費でカバーしないといけない高額医薬品を保険で賄うことができなくなってしまうかもしれない。そうなれば、本来救える人を救えなくなってしまう」と、警鐘を鳴らす。

日本の「非常識」、効果低い薬にも保険

 フランスや英国は、保険適用が認められた医薬品の費用対効果を随時検証している。そして、「保険でカバーする費用に対して、効果に乏しい」と判断すれば保険の対象外としたり、給付比率を下げたりする。

 一方、日本ではいったん薬の保険適用が認められると、保険の対象から外れることはほとんどない。効果が乏しい薬がいつまでも公的医療保険でカバーされると、無駄な処方を誘発しかねない。

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