2022年7月号掲載

新 失敗学 正解をつくる技術

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著者紹介

概要

「失敗学」とは、失敗を積極的に捉え、原因を究明して次の行動に活かすことを主眼とするもの。不確実さが増す現代社会には、明確な「正解」がない。そんな環境下で自分なりの正解を見つけるには、仮説を立てて試行錯誤し、失敗から学びを得ることが重要になる。そのために必要な心構えと技術を、失敗学の第一人者が説く。

要約

正解がない時代

 2019年12月に中国で最初に感染が報告された新型コロナウイルスは、感染力の強さと重症化率、致死率の高さから、世界を一変させた。

 初期の段階で、感染力の強さなど、ウイルスの特徴ははっきりしていた。さらにウイルス感染では、容易に株が変異し、被害を拡大させる可能性が大きいことは多くの専門家が指摘していた。

 しかし、その後2年間、同じような場面が繰り返された。感染ピークのたびにメディアに政治家や専門家が登場し、医療現場の危機的状況を伝えるとともに人の流れの抑制を呼びかけたのだ。

危機対応に脆弱な日本のシステム

 私が提唱してきた「失敗学」は、失敗を積極的に捉え、原因を究明することで次の行動に活かすということを主眼にしている。その観点から今回の新型コロナへの日本の対応を見ると、感染がピークを迎えるたびに同じことを繰り返してきたわけで、「悪い失敗」と言わざるを得ない。

 一番の失敗は、発生後1年半を過ぎても病床の逼迫が改善されなかったことだ。この間、自宅療養中に多くの人が亡くなった。こうした事態は、例えば野戦病院のような臨時の施設を設置すれば、かなり防げただろう。一連のコロナ対策ではっきりしたのは、日本全体が危機対応に極めて脆弱なシステムになっているということだった。

エリート組織が苦手なこと

 コロナ禍において必要なのは、突如やってきた大危機への対応である。そこで必要なのは、刻々と変化する状況に対し、試行錯誤しながら最善のやり方を追求することである。日本の場合、試行錯誤しないで既存の手順で危機に対応しようとして、結果として後手に回ることになった。

 これは言い方を変えれば「優等生選抜文化」の問題である。優等生選抜文化とは、ペーパーテストで成績が良い人を採用し、その後も課題に素早く正解でき、かつミスも少ない人を評価し、そうした人たちが組織の幹部になっていく文化だ。

 優等生選抜文化の組織は、目標とやるべきこと、つまり「正解」がはっきりしている場合は、非常に効率的な運営ができる。しかし正解がわからない場合、こうした人材ばかりの組織はその弱点を露呈する。「今までとは違った局面=有事」に対応できる人材がいないのである。

時代の変化に対応できていない日本

 しかしその後、日本が経済的に世界のトップグループになったことや市場の成熟などで、次なる目標をよそから持ってこようにも、それが見つからない時代に入ったのである。

 そこからすでに30年が経過した。その間、世界が大きく変化している。本来なら変化に対応した人材を育成し、評価方法や組織の形も変えていく必要がある。しかしそうした対応をせず、ズルズルと後退し続けているのが今の日本の現状だ。

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