2022年2月号掲載

自由論

Original Title :On Liberty

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著者紹介

概要

他者に危害を与えない限り、個人の行動の自由は保障されるべきであり、国家がそれ以上の干渉を加えるのは慎まねばならない ―― 。19世紀イギリスを代表する哲学者の手になる、自由論の名著である。言論、思想の自由はなぜ重要か。自由の本質を説き、その大切さに気付かせ、考えさせる本書は、不滅の現代の古典といえよう。

要約

思想と言論の自由

 言論を統制する権力は不当である。最善の政府であっても、このような強制力を行使するのは不当である。

 人々の意見の発表を禁じることには特別の害悪があり、人類全体が被害を受ける。その時の世代だけでなく、後の世代も被害を受ける。そして、発表を禁じられた人以上に、その意見に反対する人が被害を受ける。その意見が正しかった場合、自分の間違いを正す機会を奪われるからだ。

人間は間違える可能性がある

 人類の良識という観点では実に不幸なことだが、誰でも自分が間違える可能性があることは知っているものの、自分が間違える場合に備えておく必要があるとは、ほとんど誰も考えない。

 専制君主などは普通、ほとんどすべての問題で自分の意見は正しいと感じるものだ。そして庶民が自分の意見は正しいと感じるのは、周囲の人たちがみな同意見の時だけである。自分の判断には自信がない分、「世間」の判断は正しいと考える。

 だが、この場合の「世間」とは、自分が普段接している人たち、つまり、所属する党派や宗派、階級を意味しているにすぎない。

 そして、数多い世間の中でどの世間を信頼するのかは偶然によって決まった。ロンドンに生まれ育ってイングランド国教会の信者になったのと同じ理由で、北京に生まれ育っていれば仏教を信じていただろうということは容易に想像がつく。

 しかし自明のことだが、どの時代も、後の時代からみれば間違っている意見、馬鹿げている意見をもっていた。そして、過去に信じられていた意見の多くがいま、間違いだとされているように、いまの時代に信じられている意見の多くが将来、間違いだとされるのは確実である。

「間違いを改められる」という強み

 では、人類全体でみた時、合理的な意見や行動が多数を占めているのはなぜなのか。

 人は議論と事実(自分や他人の経験など)によって、自分の誤りを改めることができる。事実が積み重なるだけで改められるわけではない。事実をどう解釈すべきかを知るには、議論が必要だ。間違った意見や行動は、事実と議論とによって、徐々に改められていく。

 このように、人間の判断の強みと価値はすべて、たった1つの性格、「間違っていた時にそれを正すことができるという性格」に依存しているのだから、人間の判断に頼ることができるのは、間違いを正すための手段がつねに用意されている時だけである。

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