2021年7月号掲載

オリンピック 反対する側の論理 東京・パリ・ロスをつなぐ世界の反対運動

Original Title :NOlympians:Inside the Fight Against Capitalist Mega-Sports in Los Angeles, Tokyo and Beyond

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著者紹介

概要

「五輪はいらない!」。今、世界中でそんな声が聞こえる。コロナ禍で東京2020年大会が延期されたことで、反五輪の動きはさらに勢いづいている。その背景にあるものとは何か? 開催にかかる莫大な費用から、腐敗にまみれたIOC(国際オリンピック委員会)の実態まで、反対する側の論理を米国の元五輪選手がまとめた。

要約

オリンピックの歴史と事実

 近代オリンピックは、フランスの貴族であったピエール・ド・クーベルタン男爵が考えだしたものである。

 彼は、厳しい規律と男らしさをスポーツ文化に組み込めば、普仏戦争で屈辱的な敗北を喫したフランスを再び活気づけることができると信じた。そして1894年、欧州や北米のスポーツ団体、ギリシャ国王やイギリス皇太子などの貴族たちを集めて、オリンピックを復活させた。

 オリンピックは、矛盾の上に築かれたといえる。平和の象徴であると同時に、若者を戦争のために鍛え上げる方法でもあったのだ。また、競技は国ごとに組織されたために、愛国主義を奨励することになった ―― 。

新型コロナと東京五輪

 2020年3月、コロナウイルスについての様々な不安が世界中に広がり、東京2020オリンピックは中止すべきだという声が高まるさなかにあっても、国際オリンピック委員会(IOC)は、開催に固執した。

 このことは、オリンピックの“政治”を追ってきた者にとっては、何ら驚きではない。IOCが過去に示した尊大ぶりといささかも変わらない。

 例えば1972年のミュンヘン大会で、パレスチナの武装ゲリラがイスラエルの選手とコーチの計11人を誘拐し、殺害。その後、銃撃戦で他に6人が死亡した。この惨劇の中にあって、アヴェリー・ブランデージIOC会長は「大会は続行されなくてはならない」と主張して、悪名を馳せることになった。

 今回、IOCは東京大会の延期を発表した。それは、パンデミックの中で五輪を開催することに疑問を投げかける、世界各地のオリンピアンたちの発言から始まった。そして米国陸上競技連盟、米国水泳連盟も延期を求めた。

 さらに、カナダのオリンピック・パラリンピック委員会が、「選手派遣を拒否する」という声明を発表した。この事実上のボイコットには、オーストラリアをはじめ、ポルトガルやドイツの委員会が直ちに加わった。これがIOCを、どうしても延期するしかないところへと追い込んだ。

東京五輪、1940年の中止と2020年の延期

 東京2020は、オリンピック史上初めて延期された大会となった。しかし、東京オリンピックが災難に見舞われたのは、これが初めてではない。

 1936年、IOCは1940年の夏季大会の開催地として東京を選んだが、この選択は物議を醸した。1931年、日本が満州に侵攻したため、世界が騒然となっていたからだ。さらに日本は1937年に中国を攻撃し、第2次日中戦争を引き起こす。国際社会から批判の声が上がったが、IOCは何ら気にかけず、戦線が拡大する中、1940年冬季大会の札幌開催を決定し、日本への支持を示した。

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