2021年7月号掲載

どうせ死ぬから言わせてもらおう

科学・技術・環境社会・政治

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著者紹介

概要

かつて「世界第2位の経済大国」として栄華を極めた日本。だが近年は、様々なデータから明らかなように、国力を低下させ続けている。その要因はいったい何なのか? 生物学者であり、早稲田大学名誉教授の著者が、「どうせ死ぬから言わせてもらおう」と、科学者の冷徹な目で、縦横無尽に日本の政治、社会の課題を斬る!

要約

なぜ、下級国民は従順なのか

 かつて、経済大国の名をほしいままにした日本。だが、近年、国力は年ごとに衰えている。

日本の総合力は世界30位

 スイスのビジネススクールIMDが2019年に発表した「世界競争力ランキング」では、日本の総合力は世界30位。IMDがランキングを公表し始めたのは1989年で、1992年までの4年間、日本は1位だった。

 このランキングは企業の競争力、経済状況、政府の効率性、ビジネスの効率性、インフラなどを評価して順位を決めている。従って、ランキングは現在の経済状況というよりも、むしろ近未来の経済状況の予測であり、ランクが低ければ未来の経済状況は明るくないということだ。

 また、イギリスの『エコノミスト』誌傘下の組織が発表している、世界167カ国の政治の民主主義のレベルを示す「民主主義指数」のランキングで、日本は22位(2018年)。55カ国ある「欠陥のある民主主義」の国に、韓国やフィリピンなどと共に分類されている。

 日本は形式的には民主主義国だが、実質的には民主主義国から落ちこぼれているということだ。

組織に忠誠を誓うのはなぜか

 近年の日本を見ていると、どう考えても大多数の国民の得にならない政策を進めた安倍政権を支持した自民党と公明党が、なぜ選挙で大敗しないのか不思議な気がする。

 安倍政権の政策は、富めるものはますます富み、貧乏人はますます貧乏になる政治システムの擁護で、グローバル・キャピタリズムの繁栄のため、下級国民は貧乏になってもよいというものだった。その事実を貧乏人から隠すため、大手のメディアを使って、スポーツや芸能など政治とは無関係なニュースを大々的に流して国民の目をそらし、政権に不利なニュースは極力流さなかったのである。

 働き盛りの若者の数は減り続け、年金暮らしの年寄りの数がどんどん増える日本では、政治経済のシステムを根本的に変えない限りは、経済は煮詰まってくるのは誰が考えても自明である。

自分たちの与り知らない自然現象

 恐らく最大の理由は、消費税の増税も原発の再稼働も、自分たちの与り知らない自然現象だと思っている下級国民が多いからではないか。台風や地震をコントロールできないように、自然現象ではしょうがない、と諦めているとしか思えない。

 文芸評論家の加藤典洋は自著で、日本国民が体制に対して従順なのは、体制を人民の手で倒した歴史がないからだと、正鵠を射た意見を述べている。戦後の日本の政策決定はすべて他人任せで、国民の総意に基づいて行った政策は1つもなく、これが政治的無関心の元凶だというわけだ。

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