2021年1月号掲載

ポストトゥルース

Original Title :POST-TRUTH

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著者紹介

概要

「ポストトゥルース」。これは、客観的事実より感情に訴える方が影響力のある状況のこと。2016年の米大統領選でのトランプの勝利等を機に、急速に広まった語だが、現象そのものは古くからある。科学の否定、認知バイアス、メディアの変容…。様々な角度から、“真実が輝きを失う”プロセスを、科学哲学の専門家が明らかにする。

要約

ポストトゥルースとは何か

 「ポストトゥルース(post-truth)」。

 この現象が一躍注目されるようになったのは2016年11月、オックスフォード大学出版局辞典部門が、この単語を2016年の「今年の一語」にノミネートしたことに始まる。

 2015年、この単語の使用は2000%と急激な上昇を見せた。そして、2016年のイギリスのブレグジット(EU離脱)投票とアメリカ大統領選挙の特徴、つまり、あやふやな事実、明白な嘘といったものに、多くの人は仰天してしまった。

 2017年1月20日の大統領宣誓就任式の後も、ドナルド・トランプは虚偽を並べ立てた。彼の選挙の大勝利はレーガン以来のものであると言い(そうではない)、就任式に集まった群衆の数はアメリカ史上最大であると述べた(これが嘘であることは写真が証明している)。

 また、ハンガリー、ロシア、トルコでも政治家による偽の情報を用いたキャンペーンが行われた。こうした状況で、多くの人が、ポストトゥルースが国際的なトレンドとなったことを理解した。

ポストトゥルースの定義

 オックスフォード大学出版局辞典部門は「ポストトゥルース」を、次のように定義している。

 「公共の意見を形成する際に、客観的な事実よりも、感情や個人的な信念に訴える方が影響力のある状況を説明する、ないしは表すもの」

 この説明では、接頭辞の「ポスト(post)=後」は、時間的な意味で私たちが真実「以後」の世界にいる、ということを示すのみならず、真実が輝きを失った、つまり時代遅れのものになった、ということも意味している。

ポストトゥルースが起きる理由

 明白な、あるいは容易に確証できる事実に対して、理由もなく反論する者はいない。その人がそうするのは、そこにそうする利益があるからだ。

 ポストトゥルースの実践者たちは、証拠があろうとなかろうと、人に何かを信じさせようという試みをやめることはない。これが政治的支配のための秘訣なのだ。

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