2018年8月号掲載

「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明

「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明 ネット書店で購入
閉じる

ネット書店へのリンクにはアフィリエイトプログラムを利用しています。

※『TOPPOINT』にお申し込みいただき「月刊誌会員」にご登録いただくと、ご利用いただけます。

※最新号以前に掲載の要約をご覧いただくには、別途「月刊誌プラス会員」のお申し込みが必要です。

著者紹介

概要

ハーバード大学のクリステンセン教授著『イノベーションのジレンマ』(邦訳)。この世界的ベストセラーは「理論も実証もゆるゆるだ。経済学的に煮詰める必要がある」。こう評する、イェール大学の気鋭の経済学者が、約10年に及ぶ研究成果を披露。なぜ優良企業が新世代の技術競争に敗れ去るのか、真の理由が解き明かされる。

要約

創造的破壊と「イノベーターのジレンマ」

 ビジネスの世界は、没落企業や衰退産業であふれている。例えばアップル社のスマートフォンが出ると、従来型の携帯電話が消えてゆく。技術の世代交代に伴って、企業や産業も世代交代する。それを、経済学者は「創造的破壊」と呼ぶ。

 創造的破壊は、今に始まったことではない。そして、敗者たちも手をこまぬいていたわけではない。ところが気付けば、彼らの姿は消えている。

 彼らは、無能だったのか。

「イノベーターのジレンマ」

 1997年に『イノベーターのジレンマ』(邦訳『イノベーションのジレンマ』)がベストセラーになったハーバード大学のクレイトン・クリステンセンは、このテーマに挑んだ経営史家である。

 クリステンセンは、ハードディスク駆動装置(HDD)業界を舞台に、旧世代の「勝ち組」企業が抱える組織的・心理的な問題を指摘した。

 彼は言う。勝ち組の優良企業は、大口顧客を多く抱えている。そのため大口顧客が求める「主力製品」には力を入れる。だが、それ以外の製品は社内的に傍流になってしまう、と。

 主力製品が世間でも主流である間は問題ない。しかし、新種の製品が登場し、世の中に広まっていくような局面では、勝ち組企業の対応は後手に回りがちだ。経営陣には旧来の主力部門出身者が多いから、過去の成功体験に引きずられ、新時代への対応スピードが遅くなる ―― 。

「バカだから失敗した」では説明不足

 上記のような、既存企業における組織的・心理的バイアスが、クリステンセン仮説の主眼だった。

 「能力」と「結果」の因果関係は、簡単には実証できない。業界誌を読み、経営者にインタビューしたくらいでは(=クリステンセンの分析手法)、本来全く歯が立たないはずの実証課題だ。

 そこで本書では、しっかりデータを集め、論理と現実とを丁寧に繋いで、分析してみよう。

この本の要約を読んだ方は、
他にこんな本にも興味を持たれています。

超加速経済アフリカ LEAPFROGで変わる未来のビジネス地図

椿 進 東洋経済新報社

人口と日本経済 長寿、イノベーション、経済成長

吉川 洋 中央公論新社(中公新書)

クリエイティブ資本論 新たな経済階級の台頭

リチャード・フロリダ ダイヤモンド社