2017年11月号掲載
自分の心に気づく言葉
著者紹介
概要
心理学者・加藤諦三氏が、その膨大な著作の中から、「自分の心に気づく言葉」を厳選し、まとめた書である。氏によれば、現代人の生きづらさの原因は、自分の本当の心に気づかないことにある。「私はどうしたいのか」。それさえ認識すれば、人生を意味あるものにし、悩みやストレスの多い時代を生き抜いていけるという。
要約
自分の本当の心に気づく
精神医学者カレン・ホルナイの著作に、次のような女性が載っている。
彼女は幸せになれるものを全て持っている。安全も、家も、献身的な夫も。しかし、彼女は内的な理由で何ものも楽しめない。愛することができない。彼女の人生は空虚で、無意味である。
彼女の退屈感の下に、深い絶望感があるのを感じるとカレン・ホルナイは言う。
彼女は、なぜ絶望しているのか? それは彼女が、無意識の領域に人生に対する怒りを持っているからである。自分の心の底にある怒りに気がつかない限り、彼女は外側の環境がどうなっても不幸な生涯を送る。だが、もし心の底に怒りがあることに気がつけば、幸せの扉は開く ―― 。
彼女のように、幸せになれるのに、自分の心に気がつかないせいで生涯幸せになれない人は多い。
では、どうすれば自分の本当の心に気づき、最善の生き方ができるのか。そのヒントを紹介しよう。
日本人はうつ病的である
私は、日本人というのは平均的に見てうつ病的だと思っている。理由の1つは、我々が何かというと群れることだ。単に安心するということを通り越して、群れている方が楽しいのである。
そういう人の特徴は受け身である。自分の側から何も働きかけることはない。相手からこうしてほしいと言われることが、うれしいのである。
それはおそらく、相手の役に立つことによって自分が皆に受け入れられているという実感が持てるからではなかろうか。つまり、通常彼らは、疎外感を持っているのである。役に立つことでその疎外感を克服できる。
とり返しのつかないことなど1つもない
人生には、「とり返しのつかない」失敗というのがある。しかし、たいていのとり返しのつかない失敗というのは、その人の心の傾向によって、そのようになっているだけである。
所有に一切の価値を置く人にとって、多額のお金を失うことはとり返しのつかない失敗である。しかし、ものを所有することにそれだけの価値を置かない人にとって、円高や株で損をすることは、とり返しのつかない失敗ではない。