2017年2月号掲載

シリア難民 人類に突きつけられた21世紀最悪の難問

Original Title : THE NEW ODYSSEY

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著者紹介

概要

家族の未来を守るための手立てが、「国を捨てて難民となること」しかないとすれば ―― 。英国人ジャーナリストが、ある1人のシリア人の苦難の旅を軸に、「戦後最悪の人道危機」といわれるヨーロッパ難民危機をレポート。密航ビジネス、EUへの影響など、泥沼化する難民危機の“最前線”で起きている真実を伝え、解決策を示す。

要約

ハーシムの「旅」の始まり

 2010年末から2011年初めにかけて、アラブ世界では独裁体制に反対するデモが相次ぎ、チュニジア、エジプト、リビアなどで、体制が崩壊するか、崩壊寸前に追い込まれた。

 その波 ―― 「アラブの春」は、2011年2月、シリアにも到達した。ダマスカスの市場で行われた抗議デモが最初だったが、人々を大きく動かしたのは、3月半ばの小さな事件だった。

 シリア南部の町ダルアで、複数の少年が学校の壁に民主化を求める落書きをした。バシャル・アサド大統領は父の後を継いで大統領に就任し、父が確立した独裁体制を維持してきた。そんな政治環境で、現体制への批判は絶対に許されない。少年たちは逮捕され、拷問を受けた。

 この事件をきっかけにデモが拡大し、アサド大統領はそれを武力で弾圧したため、多くの死者が出た。こうしてシリアの反体制デモは拡大し、騒乱は内戦へと発展していく。

 さらに、アラウィー派(イスラム教シーア派の一派)のアサドを支援するレバノンのシーア派武装組織ヒズボラがシリアに介入してくると、内戦は宗派抗争の様相が強くなっていった。

 そんな中、ハーシム・スーキは突然、アサド政権の情報機関によって自宅から連行された。

 ハーシムは37歳の公務員で、とりたてて政治に関心はなかった。勤務先は地元の水道局だ。「アサド大統領がアラウィー派で、自分はスンニ派だからだろうか」と、ハーシムは思った。

 彼は半年もの間、監禁・拷問され、また内戦による空爆で自宅を破壊され、仕事も失った。もうこれ以上、シリアには住み続けられない ―― 。

 本書は、この苦難の旅路をたどり、シリア難民、そして「戦後最悪の人道危機」ともいわれるヨーロッパ難民危機の真実を伝えるものである。

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