2016年10月号掲載
正解が見えない課題を圧倒的に解決する 超仮説思考
著者紹介
概要
今や自分が知らない領域の問題でも、グーグルで簡単に答がわかる。だが、そこからは新たな価値を生み出せない。検索できるアイデアは、誰もが得られるからだ。これからの時代、検索しても出てこない仮説 ―― 「超仮説」を得ることが、ブレイクスルーのカギ。こう述べ、自由自在に最適解をたぐり寄せる頭の使い方を伝える。
要約
「超仮説」をたぐり寄せる力が真の価値を生む
現在は何百年に一度という大きな変化、「情報革命」が進展しつつある。
それを受け、社長も「過去の延長線上にはないアイデアを出せ」「常識に縛られた意見はいらない」と叱咤激励するようになってきている。
では、常識から脱却し、既存の延長線上にはないアイデアを生み出すにはどうすればいいのか?
そのためには、モノの見方を変える必要がある。
フレームワークの罠 ―― IBMの例
多くの学歴エリートは、知識やフレームワークを習得し、それを使って短時間で「正解」を導くことで成果を挙げてきた。
しかしフレームワークには、問題を単純化し、考える範囲を限定することで、唯一の「正解」を導くという構造的な限界がある。このため、答が1つではない問題を解こうとすると、破綻することが多い。そこで、まずは、よくありがちな「フレームワークの罠」について考えてみたい。
3C分析、SWOT分析等々、経営書には様々なフレームワークが出てくる。これらはいずれも経営という複雑な立体の、ある一断面を切り出し、問題を単純化して正解を導こうとするものだ。
しかし、フレームワークを使って出した答が、解決策にならないケースがある。
例えば、1990年代初頭にIBMが巨額の赤字を出して倒産寸前まで行った時、多くの識者が「IBM分割論」を唱えた。IBMのようにハードからソフトまでを丸抱えにした状態では、シリコンバレーの足の速い専業企業と戦えない。製品分野ごとに分割し、小回りが利くようにすべきというモノの見方だ。おそらく、市場・顧客、他社、自社を分析する3C分析から結論を導き出したのだろう。
確かに、目の前の市場だけを見ていると、こういう結論にたどり着きやすい。だが、IBM再生のためにCEOに登用されたルイス・ガースナーはIBM分割論を真っ向から否定した。
当時、情報技術が複雑化していく中で、顧客はその効果的な活用法がわからずに困っていた。そこで、IBMが情報技術を応用して、顧客のためにソリューションやサービスとして提供できれば、顧客のアンメットニーズ(まだ満たされていないニーズ)を満たせると彼は考えたのだ。