2015年3月号掲載

風姿花伝

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著者紹介

概要

世阿弥の『風姿花伝』が成立したのは15世紀初め。長く「秘伝書」とされてきたが、明治期に公になって以後、幅広い読者に読まれ続けている。それは、能楽書にして“自己啓発書”でもあるから。誰もが工夫次第で「花のある役者」になれると語り、学び続けることの大切さを説く。仕事や人生に役立つヒントが詰まったこの古典を、読みやすい現代語訳で紹介する。

要約

心得ておくべきこと

 そもそも、この『風姿花伝』の各項目は、あまり外に公開するような話ではなく、子孫たちに教訓として残すために記した内容である。

 ただ、能を志す同輩たちを見ると、芸の稽古は疎かで、本業以外のことばかりを行っている。たまたま興業が大当たりした時でも、ほんの一時的に浴びただけの評価と、ちょっとばかりの名声に入り浸り、本質を忘れ、古より続いてきた能の伝統を見失っているように見える。

 能の魅力は、心から心へと伝わってきた「花」。それを伝えるために私は筆をとり、『風姿花伝』と名づけた本書を世に残すのである。

「花を極めた役者」になる方法

 能において名声を得る方法には、様々なものがある。

 例えば上手な役者でも、その演技が目利きでない観客の好みに合うのは難しいことがある。

 しかし能の道を極め、演技の工夫もできる役者であれば、目の利かない観客たちにも「面白い」と思えるような演技ができるはずである。この工夫と相手に応じられる上手さを持った役者こそ、花を極めた役者と見なされるべきだろう。

 では、高尚な演技を理解できない人々にどう対処すべきか? 能の秘儀にはこのようにある。

 「そもそも芸能というものは、人々の心を和らげ、身分の上下を越えて皆が一体となれる感動を生み出せるものである。だからこそ芸能は、人々の幸福を増長し、その寿命までを延ばすことができる。まさにこの道の究極は、いつまでも幸せで、いつまでも健康な人生を人々に提供するものなのだ」

 上流階級の人々で、高い鑑識眼を持っている人たちの目で見れば問題ないが、身分の低い人々の目では、高尚な演技はなかなか理解することができない。これにどう対処すべきか?

 答えは簡単で、能の芸というのは、目の前の人に愛される能を提供することだ。だからあまりに高尚で、多くの観衆に理解できない演技ばかりでは、すべての人を喜ばせることはできない。時に応じ、場所に応じ、芸のよし悪しがわからない人にも「素晴らしい」と思えるような能をすることこそ、人を幸福にする一流の芸人への道なのだ。

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