2012年1月号掲載
職場が生きる人が育つ 「経験学習」入門
著者紹介
概要
困難なプロジェクトに参加する、できの悪い部下を持つ…。こうした経験は、人が成長するきっかけになる。だが、同じ経験をしても、成長する人と、そうでない人がいる。その差をもたらすのが「経験から学ぶ力」だ。本書では、成長する上で欠かせないこの力がどのようなものかを、優れたマネジャーへの聞き取り調査等によって明らかにし、その育み方を解説する。
要約
経験から学ぶ
人は、経験を通して学ぶ。
しかし、同じことを経験しても、成長する人と成長しない人がいる。この違いはなぜ起こるのか。
それは、「経験から学ぶ力」の違いによる。
70:20:10の法則
「70:20:10」。この比率は、人の成長を決める要素の比率である。
優れたマネジャーの経験を長年調査してきた米国の研究所によれば、学びの70%は自分の仕事経験から、20%は他者の観察やアドバイスから、10%は読書や研修などから得ているという。
経験は、自分が直接的に関わった「直接経験」と、他者からアドバイスをもらったり、本を読んだりという「間接経験」に分かれる。
直接経験が成長の大きな源泉であるのは間違いない。だが、間接経験を軽視することはできない。
友人の体験や本に書かれた歴史上の人物の生き様は、私たちが経験できない広い世界の情報を提供してくれる。こうした他者の経験は、私たちが直接経験を振り返る上で貴重な情報となる。
「経験学習サイクル」と「よく考えられた実践」
コルブという研究者は、「経験学習サイクル」を提唱している。このモデルによると、人は次のサイクルを回すことで経験から学んでいる。
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- ①「具体的経験」をした後、
- ②その内容を「内省し(振り返り)」
- ③そこから「教訓」を引き出して
- ④その教訓を「新しい状況に適用する」
「そんなことなら、自分は毎日やっている」という人がいるかもしれないが、実は、単に「経験学習サイクル」を回すだけでは十分ではない。
熟達を研究するエリクソンらは、個人を成長させる練習や仕事のやり方を「よく考えられた実践」と呼び、次の3つの条件を挙げている。