2006年10月号掲載

起業家の本質

Original Title :FOR ENTREPRENEURS ONLY:Success Strategies for Anyone Starting or Growing a Business

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著者紹介

概要

世は、起業ブームである。では、その当事者である起業家には、どんな能力が求められるのか? 本書では、起業家という“人種”について、あらゆる角度から分析し、その本質を明らかにする。著者は、起業家向け雑誌『Inc.』の元発行人として、数千人もの起業家をつぶさに見てきた人物で、自身も豊富な起業経験を持つ。それだけに、その分析、提言には説得力がある。

要約

起業家の本質とは?

 会社を設立した起業家は、極めて特殊な「恐怖のクラブ」に所属することになる。

 ここで味わう恐怖は、これまでに経験したことのないもので、逃れることができない。そして、その恐怖は、意思決定をする時に襲ってくる。

 例えば、著者が最初の会社を始めた時のこと。欧州と中東にある軍事基地への食品委託販売を行うこの会社は、クラフトフードという会社の代理店となった直後、売上高が急増した。

 しかし、ある日、クラフトの社長ロフティスに、「ドイツの軍事基地内販売を、自社の販売社員に引き継がせることにした」と、告げられた。

 ドイツのマーケットは、全販売手数料の約半額に相当する。これでは、失業したも同然だった。

 著者は深呼吸をしてこう言った。「あなたがドイツを引き継ぐというのなら、ドイツだけでなく全部を引き継いでもらうことにいたしましょう」。

 その場を息苦しい沈黙が襲った。永遠とも思われる時間が過ぎ、ロフティスは言った。「後で決定をお知らせします」。

 彼が決断を下すのに1カ月かかった。その間、昼夜を問わず、ぞっとする恐怖に脅えつつ過ごした。そして1カ月後、前言を撤回する手紙が届く。

 食品委託販売会社は、その後も長年にわたってクラフトの代理店を続け、やがて業界最大の軍事基地内の代理店網にまで発展した —— 。

 この経験は、恐怖に加えて、著者に「起業家であること」の第2の秘密も教えてくれた。それは報酬である。この“満ち足りた気分”は、辛かったことを吹き飛ばして余りあるとわかったのだ。

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