2026年10月号掲載
人は仕事の場で育つ
著者紹介
概要
人はいかにして仕事の場で育つのか。日本を代表する経営学者・伊丹敬之氏が、事例を交え論じた。経験と学びを通じて人が自ら育つプロセスを示すとともに、「仕事内容そのもの」「権限委譲の大きさ」など、成長に大きく貢献する6つの要素を詳述。人が育つ場を適切に設計したいと願う経営者に、多くの示唆を与えてくれる書だ。
要約
人が育つということ
しばしば、人は「経験から育つ」「仕事の中から育つ」といわれる。では、仕事の場での経験から、どのようなプロセスと論理で人は育つのか。
人が育つ3つの基本プロセス
自らの仕事に関わる育ち(学び)を振り返り、それがどんなプロセスで進んだかを考えてみてほしい。おそらく多くの人が「経験から学ぶ」ことと「自分の思索から学ぶ」ことを挙げるだろう。
その経験とは、仕事の場で行動し、そこから生まれる成果を経験する「行動経験」と、他者との「つながり経験」に分けられる。そして、経験から学ぶプロセスで、反省という自分なりの思索が入っていることも自覚するだろう。
つまり「仕事の経験」が学びの最大の源泉で、そこに様々なきっかけ(例えば失敗の反省や読書など)から生まれる「深い思索」が加わる、というのが仕事の場で人が育つ基本プロセスだ。
行動する力とは
では、組織の中で自分の行動をより適切なものにするためには、どんな力をもつ必要があるか。
最も基本的なものは「行動する力」だろう。それは、次の3つの力の総合だと考えるとよい。
・判断力
判断力とは、どんな行動をとるのがその状況で最も望ましいかを判断する力である。
これをさらに細かく考えれば、まず現実を観察した上で適切と思われる行動案をいくつか発想する力が必要となる。つまり判断力の第1要素は発想力で、それは観察などに刺激されて、直感によって新しいアイデアを生み出す力のことだ。
次に、複数の行動案の中から「この状況では最適」と思われるものを選択することが必要となる。その選択は、行動とそれがもたらす結果の関係を論理的に考えることによって可能になる。つまり、論理的検証力が判断力の第2要素である。
・実行力
こうして判断ができたとしても、その判断からすぐに行動案の実行が始まるわけではない。なぜなら、未来には何が起こるかわからないという不確実性が残っているからだ。
従って、実行を開始するには覚悟が必要となる。その覚悟をすることを決断と呼ぶ。つまり、決断ができなければ実行は始まらない。