2026年9月号掲載
科学否定論はなぜ人をひきつけるのか ――地球平面説から反ワクチンまで
- 著者
- 出版社
- 発行日2026年6月10日
- 定価1,012円
- ページ数236ページ
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著者紹介
概要
地球は球体ではなく平らである。気候変動の原因は人間の活動ではない…。近年、科学の通説を否定する「科学否定論」、専門家の見解を疑う“陰謀論”が広がっている。でたらめに思えるが、こうした見方にハマる人も少なくない。なぜか? 科学否定論が生じる背景、実態を明らかにするとともに、専門家との望ましい向き合い方を説く。
要約
「地球平面説」という謎
「地球平面説(フラットアース)」をご存知だろうか。その名の通り、地球が球体ではなく、本当は平面だとする議論のことである。
地球が球体であることは、現代人にとって最も自明な知識の1つだろう。宇宙から撮影した地球の写真はほとんどの人が見ているはずだ。
だから「地球は平面だ」などと言われても、馬鹿げていると思うのが普通である。ところが、2010年代後半から米国を中心に、地球平面説が無視できないほどの広がりを見せている。
ポストトゥルースの時代?
地球平面説が注目され始めた2010年代後半、米国でディープステイト(闇の政府)による陰謀を疑う「Qアノン陰謀論」が広がった。そのため地球平面説とQアノン陰謀論は、「ポストトゥルース」という時代状況の象徴とされてきた。
この言葉は「ポスト」(以後)と「トゥルース」(真実)をつなげた言葉で、直訳すると「真実以後」、つまり「客観的事実」よりも感情や信念の方が世論に影響を与えてしまう状況を指す。
2016年の英国のEU離脱をめぐる国民投票や、米国でのトランプ政権の誕生を受け、人々がフェイクニュースに惑わされてしまうことへの危機意識が高まり、ポストトゥルースが流行語となった。
そこには、人々が「真実」を気にかけなくなり、熟慮ではなく直観に頼ってしまうために、フェイクニュースが広がっているとの現状認識がある。
なぜフェイクニュースは拡散するのか
しかし、「真実」を気にかけて熟慮すればフェイクニュースに引っかからずに済むかというと、話はそう簡単でもない。というのも、フェイクニュースは多くの場合、「真実」を知ろうとする人々の心理を逆手に取ろうとするからだ。
例えば、「ワクチンの真実」といった言葉で人々の関心をひきつける。そうして届けられた偽情報は、人々の認識を左右する。これまで以上に「真実」が求められる今日、「真実」を求めすぎることが偽情報の拡散を可能にしている。
科学否定論とは何か
地球平面説のように科学の通説を否定する議論は、近年では「科学否定論」と呼ばれている。