2025年11月号掲載
増補改訂版 フィードバック入門 部下が成果を出すための最も効果が高い育成の技術
著者紹介
概要
数ある人材育成法の中でも、効果が高いとされる「フィードバック」。部下の成長を信じて、現状に関する情報を提供し、行動の改善・促進を図るものだ。そのノウハウを、人材開発の専門家が体系的に解説。部下の指導に悩むマネジャーに、「耳の痛いこと」も「良いところ」も上手に伝え、彼らを成長へと導く秘訣を教えてくれる。
要約
フィードバックの技術 基本編
フィードバックとは、端的に言えば、「耳の痛いことを部下にしっかりと伝え、彼らの成長を立て直すこと」である。より具体的には、次の2つの働きかけを通して、問題を抱えた部下や、能力・成果のあがらない部下の成長を促すことを目指す。
- ①【情報通知】たとえ耳の痛いことであっても、部下のパフォーマンスなどに対して情報や結果をちゃんと通知すること(現状を把握し、向き合うことの支援)
- ②【立て直し】部下が自己のパフォーマンスなどを認識し、自らの業務や行動を振り返り、今後の行動計画をたてる支援を行うこと(振り返りと、アクションプランづくりの支援)
では、部下のパフォーマンスを向上させるには、どのようにフィードバックを行えばよいのか。そのプロセス、ポイントは次の通りである。
【事前】情報収集
フィードバックは事前準備が最も大切であり、そこから勝負が始まっている。なぜなら、相手に刺さるようなフィードバックをするためには、「できるだけ具体的に相手の問題行動の事実を指摘すること」が必要だからだ。
よって、フィードバックを行うために必要なデータを、事前に部下の行動を観察することで徹底的に収集することが求められる。データとしては、次の「SBI情報」を準備しておくのがよい。
- ・Situation(どんな状況で、どんな状況の時に)
- ・Behavior(部下のどんな振る舞い・行動が)
- ・Impact(周囲やその仕事に対して、どんな影響をもたらしたのか。何がダメだったのか)
この3点を具体的に伝えることで、初めて、相手はあなたの言いたいことを理解してくれる。
例えば、「A社のプロジェクトを担当してもらったけれども(=シチュエーション)、君のスケジュール管理に不備があったことで(=ビヘイビア)、納期が1週間も遅れてしまったようだね(=インパクト)」といった具合である。
フィードバック
ここからフィードバックの本格的な開始だ。
①信頼感の確保
まず、部下の「信頼感」を確保することが求められる。一般にフィードバックは「ブラックボックス」の中で行われる。部下は耳の痛い話を突きつけられることになるので、情報が漏れず、他人の目に触れない場所を選ぶことが重要である。
会話は雑談から始まるケースが多い。相手のことをよく知っている、考えているという印象を与えて、徐々に「過剰な緊張」をほぐしていこう。
フィードバックは、相手の成長を願い、相手の意志をリスペクト(尊敬)する態度から始める。それがベースになければ、人は行動を変えない。
②事実通知:鏡のように情報を通知する
緊張を解いたところで、いよいよ本題に入る。