2025年6月号掲載

菊と刀 日本文化の型

Original Title :THE CHRYSANTHEMUM AND THE SWORD (1946年刊)

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著者紹介

概要

アメリカの文化人類学者が戦時中に執筆し、1946年に出版した第一級の日本文化論。美を愛し、菊作りに秘術を尽くす一方で、刀を崇拝し、武士に最高の栄誉を与える。どれほど不本意でも、義理は必ず返す…。他国の者には理解しがたい、日本人特有の行動と文化。その背景にあるものを、文献調査を通じて鮮やかに描き出す。

要約

戦時に見る日本人の特異性

 日本人は、アメリカがこれまでに戦った敵の中で最も気心の知れない敵であった。このため太平洋における戦争では、軍隊輸送や補給に関する容易ならぬ問題を解くだけでなく、日本人の性情を知ることが主要な問題になった。

 それを理解するのは困難だった。彼らは美を愛好し、芸術家を尊敬し、菊作りに秘術を尽くす国民である。この同じ国民が刀を崇拝し、武士に最高の栄誉を帰するのだ。ところがこれらの矛盾が、日本を理解するための縦糸と横糸になる。

 日本人は不遜であるとともに礼儀正しく、頑固であるとともに順応性に富み、保守的であるとともに新しいものを歓迎する。そして彼らは自分の行動を他人がどう思うかということを恐ろしく気にかけると同時に、他人に自分の不行跡が知られない時には罪の誘惑に負けてしまう ―― 。

精神がすべて

 どんな国でも、文化的伝統の中に戦争に関する定法をもっている。そして多くの西欧諸国は、一定の戦時慣例を共有している。戦争遂行のために国民が全力を傾けるように鼓舞する方法、局所的敗北を喫した場合に国民に安心を与える方法…。これらは、西欧諸国間の戦争においては初めから予測することができる。

 しかし日本は違う。日本人が西欧の戦時慣例に違反して行ったあらゆる行為は、彼らの人生観を知り、義務に関する信念を知る資料になった。

 例えば、アメリカは戦争において、終始一貫して物量の増大に専念した。一方、日本は非物質的手段を利用する点において首尾一貫していた。

 彼らによれば、精神がすべてであり、永久不滅のものであった。物質的な事物も必要だが、それらは二の次である。彼らの軍隊用問答書には、「数には訓練をもって当たり、鋼鉄には肉弾でぶつかれ」と記されていた。あのちっぽけな飛行機を駆り、我々の軍艦目がけて体当たり自爆をする「カミカゼ特攻隊」は、精神の物質に対する優越を物語る教訓とされた。

精神は肉体を凌駕する

 一般人の生活においても、日本の当局者は物質に対する精神の優位を強調した。例えば戦時下において、国民は工場での24時間労働と終夜の爆撃とで疲労の極に達していた。だが、当局者は「我々の体が辛ければ辛いほど、ますます我々の意志、我々の精神は肉体を凌駕する」と説いた。

 アメリカ人は、前日に何時間眠ったか、平常通り食事をしたか、などによって、どれだけ体力を使ってよいかを計算する。だが、日本の場合、体力を蓄えることなど全く眼中においていない。

 

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