2025年2月号掲載
AIにはできない 人工知能研究者が正しく伝える限界と可能性
- 著者
- 出版社
- 発行日2024年11月10日
- 定価1,012円
- ページ数238ページ
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著者紹介
概要
ChatGPTを筆頭とする生成AIの登場で、AIブームが起きている。その能力への期待が高まっているが、人工知能学会会長の著者は言う。今のAIは万能ではない、と。こう釘を刺し、AIにできること・できないことをわかりやすく示した。そして、人からの依頼がなくても能動的に動く次世代AI、「自律型AI」の可能性について語る。
要約
生成AIには何ができ、何ができないか
1950年代に誕生したAI(人工知能)は、2000年あたりから性能が急激に上昇した。
2020年代にはChatGPTを代表とする生成AIの中心的な存在である大規模言語モデルの開発に成功、さらに急激に性能が向上する段階に突入した。
汎用AIの誕生
ChatGPTの登場は、これまでのAIが到達できなかった「汎用AI(AGI)」の領域に突入した点で、極めて大きな偉業と見ることができる。
従来のAIは、銀行のオンライン窓口での自動受付など、必要な能力が限定された環境で利用された。こうしたAIは「用途限定AI」と呼ばれる。
用途が限定されると、AIによる応答の仕方もパターン的なもので済む。しかし、我々からの問いかけの仕方や内容は多様であり、単純な問い合わせだけでなく、アイデアを求められたり、感想を求められたりするかもしれない。
まさにChatGPTはそのような使い方ができ、人からの問いかけに対して流暢な言葉で反応できる。すなわち、これまでのAIが到達できなかった汎用性を持つAIが誕生したということである。
汎用AIも、人が使う“道具”としてのAI
汎用AIと聞いて、ドラえもんや鉄腕アトムのようなものを想像する人もいるかもしれないが、そうではない。汎用AIはキャンプで使う多目的ツール(十徳ナイフ)のようなものだ。ナイフやドライバー、ノコギリなど色々な道具が1つのツールに収納されている、まさに汎用ツールである。
ここで重要なのが、このツールを使う場面において、どの機能を選ぶのかは「人」が決めなければならないということだ。汎用AIも、人が使う“道具”としてのAI(道具型のAI)なのである。
ChatGPTは汎用性を獲得した最初のAIであり、何を聞いても適切に回答してくれる。でも、我々からの問いかけがなければ何も動作することはない。そのためChatGPTは、本来は「人が直接使うには扱いにくいAI」なのだ。
では、ドラえもんや鉄腕アトムはどんなAIかといえば、「自律型のAI」ということになる。
これが前述の汎用AIとどこが異なるのかといえば、状況に応じて自らがどの機能を使うかの判断までする能力を持っているということだ。こうなると、我々生物にかなり近づいた存在といえる。