2023年10月号掲載

簡素な生活

Original Title :LA VIE SIMPLE. (1895年刊)

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著者紹介

概要

私たちは、物質的に豊かになる中で大切なものを失った ―― 。文明化が進み、社会が複雑さを増しつつあった19世紀末、フランスの宗教家が「人間らしく生きる」ことを論じた書である。なぜ、財産があってもみじめな思いに囚われるのか? 人の本質を抉る著者の言葉は、100年以上の時を超え、現代の我々の心にも刺さるものだ。

要約

複雑な生活

 今日では、揺籃から墓場に至るまで、その欲求においても快楽においても、近代人は数知れぬ複雑なものの中でもがいている。

 もはや何一つ簡素なものはなくなった。我々は我々の手で、無数の困難を生活につけ加えたのだ。

増大する欲求

 例えば、生活の複雑化は、我々の物質的欲求の多様さにおいてあらわれている。今世紀、あまねく認められた現象の1つは、我々の欲求が我々の富とともに増大したことだ。

 そのこと自体は悪いことではない。ある種の欲求が生まれることは、1つの進歩を示すものである。清潔な下着を着けたり、衛生的な住宅に住んだりする必要を覚えることは、卓越の1つの印だ。

 だが、そうした望ましい欲求がある一方で、不幸な影響を及ぼす欲求もある。

 現代人は、我々の祖先よりも満足しているだろうか? 現代人の生活ぶりを見ていると、私には、彼らの大部分がその運命に不満で、何よりもまず物質的欲求にあくせくし、明日への心労に取り憑かれているように見える。「何を食べよう?」「何を着よう?」という問題は、貧しい人々だけの問題だと思うのは誤りである。

 安楽な暮らしの人々や、金持ちを見てみるといい。1枚の着物しか持たない女たちは、何を着ようかと最も思いわずらう女たちではない。同様に、明日は何を食べようかと最も思いわずらう者は、最小限度の食糧を与えられている人々ではないということがわかるだろう。

 「人間の欲求は、与えられる満足によって増大する」という法則の必然の結果として、人は財貨を持っていればいるほど、ますます財貨がほしくなるものなのである。

欲望のための闘い

 こうしたことの結果として、我々は先祖より、いっそう幸福にはなっていないし、またいっそう穏やかにも、親しくもなっていない。人は欲求と欲望が多ければ多いほど、その同胞と争う機会が多いものであり、それらの争いは原因が正しくないだけ、執念深いものだ。

 人々がパンのために闘うのは、自然の法則だ。この法則は乱暴に見えるかもしれないが、初歩的な残酷さにとどまる。しかるに、野心や特権や物質的な享楽のための闘いは、それとは全く異なったものだ。いまだかつて飢えは、野心や貪欲や不健全な快楽への渇望が人間に犯させるような下劣な行いを人間に犯させたことはない。

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