2023年5月号掲載

田坂広志 人類の未来を語る 未来を予見する「12の洞察」

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著者紹介

概要

人類の未来は、どこに向かうのか。そして、これからの時代にどう処すべきか ―― 。多くの人が抱く疑問に答える。その方法は、“弁証法による未来予見”。「欧州最高の知性」ジャック・アタリ氏が称賛する、著者・田坂氏のものの見方だ。複雑性を増す社会、民主主義の今後…。12のテーマを取り上げ、明快に読み解いていく。

要約

未来を予見する方法は、何か

 2021年4月、「欧州最高の知性」と呼ばれる思想家、ジャック・アタリ博士から、メールを頂いた。筆者の著書を読んで感銘を受けたので、詳しく話が聴きたい、という。この著書は、18世紀のドイツの観念論哲学者、ゲオルク・ヘーゲルの思想「弁証法」によって、人類の未来を読み解いたものである。

 筆者は、アタリ博士の要請に応え、12のテーマについてレクチャーを行った。例えば ――

「螺旋的プロセス」による発展の法則

 未来については、「具体的な予測」はできないが、「大局的な予見」はできる。そのために極めて有効な方法が、「ヘーゲルの弁証法」である。

 この弁証法の法則で、特に役に立つのは「螺旋的プロセス」による発展の法則だ。これは、「物事の変化や発展、進歩や進化は、あたかも螺旋階段を登るように起こる」という法則である。

 すなわち、螺旋階段を登っていく人を横から見ると、上に登っていく、つまり「進歩や進化」をしているように見える。だが、この人を上から見ると、元の位置に戻って来る、つまり「復活や復古」が起こる、という法則である。

 ただし、これは螺旋階段であるため、必ず一段高い位置に登っている、つまり、必ず「新たな価値」が付け加わっている、という法則でもある。

 従って、この法則を一言で述べるならば、世の中の物事が変化や発展、進歩や進化をしていく時、「古く懐かしいものが、新たな価値を伴って復活してくる」ということを意味している。

 例えば、「eメール」は、かつての「手紙」の文化の復活である。手紙は届くのに何日もかかり、配送コストも高かった。しかし、eメールはコストがかからず、地球の裏側にでも一瞬で届く。その意味でeメールは、古く懐かしい手紙の文化が「新たな価値」を伴って復活した事例といえる。

「対立物の相互浸透」による発展の法則

 弁証法には、もう1つ大切な法則がある。「対立物の相互浸透」による発展の法則である。これは「対立し、競っているもの同士は、互いに似てくる」という法則である。

 例えば、現代では、営利企業はCSRやSDGsの形で「社会貢献」を重視するようになっている。逆に、非営利組織は、社会貢献事業を持続可能にするために「収益」を重視するようになっている。

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