2023年3月号掲載

ゼロからの『資本論』

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著者紹介

概要

1867年に初版が刊行された『資本論』。世界的な名著だが、読み通すのは容易ではない。本書は、難解・長大で知られる、この大著のエッセンスをわかりやすく説くもの。近年の研究成果も踏まえ、『資本論』を従来にない視点から読み直し、マルクスの真意に迫る。誰もが理解できる、文字通り“ゼロから”の入門書だ。

要約

労働、資本、富

 日本で年収300万円未満の単身者の貯蓄額を見ると、30代の中央値は15万円、40代はわずか2万円。雇用者全体の4割に近い非正規の労働者の暮らしは、かなり追い込まれている。

 また、地球環境も危機的な状況だ。熱波や洪水、干ばつなどによる経済的な損失は増大している。そんな中、様々な所で資本主義の「危機」「限界」が指摘されるようになった。そこで、近年の研究成果も踏まえて『資本論』を読み直そう。そうすることで、別の社会を想像できるかもしれない。

「物質代謝」としての労働

 まず「労働」という行為から資本主義に迫ろう。

 人間は、絶えず自然に働きかけ、様々な物を生み出しつつ生を営んできた。家や食べ物などを得るために自然に働きかけ、自らの欲求を満たす。こうした自然と人間との相互作用を、マルクスは「人間と自然との物質代謝」と呼んだ。

 「物質代謝」とは元来は化学・生理学の用語で、〈生体に取り込まれた物質が、多様な化学変化を経て、異なった物質となって体外に排出される過程〉を指す言葉である。

 『資本論』の核心に迫るうえで、この概念は重要だ。というのも、人間が自然との物質代謝を規制し制御する行為が「労働」だからである。ラーメンもパソコンも、自然に働きかけることなしに作ることはできない。つまり、私たちは自然との物質代謝を離れて生きることができず、その限りで労働もなくならない、ということだ。

人間の労働は何が特殊か

 あらゆる生き物が自然との物質代謝を行いながら生きているが、人間だけが目的を持った「労働」を介して、自然との物質代謝を行っている。例えば、暖をとるだけなら暖かい服を作れば十分だが、人間は「きれいな服を作る」という目的のために、染料で服を染めたりする。

 また、人間と自然との物質代謝は循環的で、一方通行で終わらない。例えば、化石燃料の大量消費による二酸化炭素の排出は気候変動を引き起こし、私たちの文明を脅かす。要するに、私たちの暮らしや社会の姿は、私たちが自然に対してどのように働きかけるかで決まる。だから、労働は人間の自由や繁栄にとって極めて重要な活動なのだ。

 つまり、マルクスは、人間の「労働」が資本主義のもとで、どのように営まれているかを考察することで、資本主義の特殊性に迫っているのだ。

『資本論』は「富」から始まる

 『資本論』の第1巻第1章で、マルクスは言う。資本主義社会の「富」は「商品」という形で「現れる」と。では、そもそも「富」とは何か?

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