2022年4月号掲載

生殖危機 化学物質がヒトの生殖能力を奪う

Original Title :COUNT DOWN:How Our Modern World Is Threatening Sperm Counts, Altering Male and Female Reproductive Development, and Imperiling the Future of the Human Race

※『TOPPOINT』にお申し込み頂き「月刊誌会員」にご登録いただくと、ご利用いただけます。

※最新号以前に掲載の要約をご覧いただくには、別途「月刊誌プラス会員」のお申し込みが必要です。

著者紹介

概要

今、世界的にヒトの生殖能力が低下し続けている。原因は、「内分泌かく乱化学物質」である。どこにでも存在し、体内に長くとどまって、ひそかに害を及ぼす。いわゆる“環境ホルモン”問題の全貌を、環境医学・公衆衛生学教授が、最新の研究に基づき、明らかにする。地球規模で進む“生殖危機”に警鐘を鳴らす!

要約

生殖ショック

 今、人類は、愕然とするような生物学的現実に対処することを迫られている。

 西洋諸国では、精子数と男性の性ホルモンであるテストステロンの値が、過去40年間で劇的に低下している。また、思春期を早く迎える少女が増えており、成人女性が良質の卵子を失う年齢がこれまでよりも早まっている。流産も増えている。

 他の生物種にも問題が生じている。ペニスが異常に小さなワニやヒョウ、またオスとメス両方の生殖腺を持つ外性器異常の魚や鳥の増加など、野生生物の間でも生殖器の異常が増えつつあるのだ。

 その正確な原因が何なのかについては盛んに議論が続けられているが、その可能性の高い原因を指し示す証拠は着実に積み上がっている ―― 。

精子存亡の危機がもたらす恐怖

 2017年7月、英BBCは「精子数の急減が人類を滅亡させるかもしれない」と報道し、米フィナンシャル・タイムズ紙は「精子数急減により、男性の健康に『緊急の警鐘』が鳴りひびく」と報道。ニューズウィーク誌も大型特集記事を掲載した。

 こうした多くの報道の引き金となったのは、私の科学論文『精子数の時間的傾向:系統的レビューおよびメタ回帰分析』である。この論文で、西洋諸国で生じつつある精子数の減少に歯止めがかかっていないこと、過去40年で、精子数が50%も急減したことを指摘した。

 この減少が同じペースで続くなら、2050年には多くのカップルが子供を作るために、生殖補助医療、凍結受精卵、さらには他の細胞から作り出される卵子や精子に頼らなくてはならなくなる。

男性性の低下

 2016年に発表された、約500人の男性から得た9425の精液サンプルを対象とした研究では、ボストン地区の若年成人男性において、2003年から2013年の間に精子の濃度、運動性、総数が大きく減少していた。基準を満たした割合は、2003年は69%だったが、2013年は44%だった。

女性の側の問題

 女性にも、生殖機能の変化が生じつつある。

 世界の出生率は、1960年から2015年にかけて50%低下している。この低下の原因を、女性が第一子を妊娠する年齢の上昇や、カップルが希望する子供の数の減少など、社会の流れに求めることはたやすい。そのような流れが、この変化に寄与していることは間違いない。

この要約を読んだ方は、
他にこんな要約も読んでいます。

良心をもたない人たちへの対処法

マーサ・スタウト 草思社

年寄りの話はなぜ長いのか

高田明和 東洋経済新報社

沈黙の春

レイチェル・カーソン 新潮社(新潮文庫)

スマホ脳

アンデシュ・ハンセン 新潮社(新潮新書)