2022年3月号掲載

脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか 脳AI融合の最前線

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著者紹介

概要

脳研究で、快感を人工的に生み出すことに成功。また、人工知能が中国の医師国家試験に合格するなど、近年、脳と人工知能の研究・開発が急速に進んでいる。では、脳と人工知能をつなぐと、何ができるのか? 「脳AI融合」の最先端の状況を、この新たな研究領域で活躍する著者たちが解説。想像を超える現実、可能性が示される。

要約

脳とAI融合の「現在」

 近年、脳や人工知能(AI)に関するあっと驚くようなニュースをよく耳にする。

 例えば、脳研究では「快感を人工的に生み出すことに成功した」という報告がなされている。人工知能の分野でも、「人工知能が中国の医師国家試験に合格した」といった成果が生まれている。

 ではもし、脳と人工知能という爆発的に進歩している学問どうしを組み合わせたら、一体どれほどのことができるのか?

 実際に、ここ数年で、これらの分野を組み合わせた衝撃的な研究がいくつも発表されている。例えば ――

思い浮かべたことを翻訳してくれる人工知能

 「脳活動を人工知能で読み取ることで、その人が考えていることを直接文章に翻訳できるようになった」という研究がある。

 カリフォルニア大学サンフランシスコ校のエドワード・チャン先生らによるもので、この研究ではまず、皮質脳波計というシート状の電極を、てんかんの患者の脳に手術で埋め込んだ。次に、患者に50個ほどの短い文を音読してもらい、その間の脳波を記録した。

 この一連の流れを繰り返すことで、人工知能は「こういうことを話している時には、脳はこういった活動をする」という関係性を学習していく。人工知能がこの対応づけをきちんと学習できれば、それを逆方向に用いることで、その人の脳活動から文章を予測できるようになる。

 この研究がさらにすごいのは、「文章を音読せずに頭の中で思い浮かべるだけで、その文章を予測できるようになった」という点だ。最終的にこの研究では、「頭の中で考えていることを文章に翻訳する精度」が最大で97%に到達したという。

バーチャルネズミの誕生

 「バーチャルなネズミ」とは、現実世界におけるネズミの骨格や関節、筋肉のデータをもとにコンピューター上で再現したネズミのことである。研究チームがこのバーチャルネズミをコンピューター内の迷路に入れたところ、現実世界のネズミと同じように試行錯誤しながら、最終的に迷路を解くことができるようになった。

 バーチャルネズミは、実際に生物のような脳を持っているわけではない。だが、いずれ「バーチャルな脳を持ち、現実のネズミとまったく同じように行動するバーチャルネズミ」がシミュレートできたとしたらどうなるか?

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