2021年5月号掲載

まちづくり幻想 地域再生はなぜこれほど失敗するのか

まちづくり幻想 地域再生はなぜこれほど失敗するのか ネット書店で購入
閉じる

ネット書店へのリンクにはアフィリエイトプログラムを利用しています。

※『TOPPOINT』にお申し込みいただき「月刊誌会員」にご登録いただくと、ご利用いただけます。

※最新号以前に掲載の要約をご覧いただくには、別途「月刊誌プラス会員」のお申し込みが必要です。

著者紹介

概要

多額の財源を投じているにもかかわらず、地方の衰退が止まらない。なぜ、うまくいかないのか。それは、多くの人が「幻想」に囚われているからだ。予算があればどうにかなる、成功事例をマネすればよい…。本書は、多くの事例を挙げて幻想がもたらす弊害を指摘するとともに、これを振り払い、再生を果たすヒントを提示する。

要約

大企業の地方進出は良いことか?

 「地方再生」は今、混迷の度を深めている。

 戦後、地方交付税交付金という制度ができ、今では約16兆円が毎年配られている。さらに2014年からは、地方創生政策の柱として年間1兆円を超える予算が投じられた。それでも、人口の東京一極集中は続いている。

 なぜ、莫大な財源が投入されたにもかかわらず、地方の衰退は止まらないのか。それは、地域の多くの人たちが「幻想」に囚われているからだ ―― 。

大企業の地方拠点は手放しに良いことではない

 幻想に囚われる原因の1つは、不確かな情報を鵜呑みにすること。例えば、よく耳にする「大企業の地方進出」のニュースには注意が必要だ。

 大企業の地方進出が地域のためになるには、条件がある。まず、本社同様の「正社員雇用」が約束され、しっかりとした給与が支払われることだ。

 2020年には人材派遣会社大手のパソナによる、淡路島への本社移転のニュースがあった。メディアは「地方の時代だ!」と盛り上がったが、それを鵜呑みにするのは危険だ。

 パソナの淡路島事業は、子会社が中心になり取り組んできた。廃校を利用したマルシェやレストランなどの経営である。だが、関連会社の決算をみると順風満帆ではない。2019年6~11月期の連結決算は、純利益が前年同期比38%減の3億9200万円。淡路島などで手掛ける地方創生事業では3億9600万円の減損損失を計上している。

 このような状況で、同社は本社機能の一部を淡路島に移すと発表した。これは「本社機能の一部」の移転であって、本店そのものの移転ではない。つまり、納税する自治体は東京都なのだ。

 契約社員という非正規雇用をベースにしながら、正社員の7割の給与で、大学・大学院卒が16万6000円。さらに淡路島に居住することから、寮費2万600円と食費3万9600円が取られる。これでは、地元に落ちるお金すら限定的だ。

地域に必要な企業の条件とは

 地域産業で大切なのは、一部の強い企業に頼るのではなく、重層的な集積である。中長期にわたって、地元資本で続けられることが大切なのだ。

この本の要約を読んだ方は、
他にこんな本にも興味を持たれています。

アマゾン化する未来 ベゾノミクスが世界を埋め尽くす

ブライアン・デュメイン ダイヤモンド社

the four GAFA 四騎士が創り変えた世界

スコット・ギャロウェイ 東洋経済新報社

世界を変えた8つの企業

ウィリアム・マグヌソン 東洋経済新報社