2021年5月号掲載

プライバシーという権利

IT・インターネット社会・政治
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著者紹介

概要

フェイスブックの個人データが選挙活動に悪用されるなど、近年、個人情報がリスクにさらされることが増えた。そんなリスクから情報を守り、個が尊重される社会をつくるには、権利としてのプライバシーを問い直すことが欠かせない。そう語る法学者が、プライバシーの本質を明らかにし、この権利を取り巻く法制度について論じる。

要約

プライバシーはなぜ守られるべきか

 プライバシーとは、何のためにあるのか。

 プライバシーが保護されるべき理由は、「各人の私秘性を保ち、人格発展に資するからである」としばしば説明される。

 しかし、プライバシーの保護は「公共性の維持」にも貢献すると考えられている。プライバシーとは、単なる「私」の保護にとどまるものではなく、「公」の創造にも資するものなのだ。

ケンブリッジ・アナリティカ事件の衝撃

 そのことを示す象徴的な出来事が、ケンブリッジ・アナリティカ事件である。

 世界中のフェイスブック利用者の最大8700万人の個人データが、データ分析会社のケンブリッジ・アナリティカなどへと流され、選挙活動に利用された。この事件は、「個人データの搾取による民主主義への挑戦」として捉えられた。

 個人データに基づく投票行動の操作は主に、2016年に行われた2つの選挙、すなわちEU離脱をもたらした英国の国民投票と、トランプ前大統領が当選した米大統領選挙において行われた。

 内部告発をした同社の元研究員クリストファー・ワイリーは、欧州議会の公聴会で、「ケンブリッジ・アナリティカにより作られたデータターゲット技術とアクターネットワークがなければ、イギリスのEU離脱は起きなかったと信じている」と証言した。

 ケンブリッジ・アナリティカなどのデータ分析会社は、「マイクロターゲティング」という分析手法を用いる。これは、個々の投票者のフェイスブックの投稿履歴や友達などを分析し、パーソナライズされた広告を配信するなど、特定の投票者の行動をターゲットにするものだ。

 1人のフェイスブック利用者による平均68の「いいね!」の履歴から、白人か黒人であるかは95%、性別は93%の確率で予測できる。独身か既婚か、飲酒の有無、宗派なども予測が可能だ。

 報道によれば、心理学において「OCEANモデル」と呼ばれる、公開性・誠実性・外向性・協調性・神経症傾向の5項目から性格診断をする手法を用いて、「いいね!」などから推知された支持政党を含む個人の属性が予測された。そして得られた情報を細分化し、投票者の住所・居住地区の情報と組み合わせて選挙活動に利用されたという。

 また、同社の元社員ブリタニー・カイザーは、OCEANモデルによって「神経質」と分析された若い層の女性グループにメッセージを送ったところ、95%の確率でこれらの女性の関心を34%高め、投票に影響を及ぼしたと告白している。

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