2020年8月号掲載

NEO ECONOMY 世界の知性が挑む経済の謎

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概要

産業革命以来、モノを効率よく大量生産することで経済は成長してきた。だが、デジタル技術の進歩で、経済の構造は大きく転換しつつある。富の源泉が、モノからデータや知識など“無形資産”に移ったのだ。この大変化、「ネオ・エコノミー」における豊かさとは? リスクとは? 最新の事例を交え、新しい経済社会の姿に迫る。

要約

進化する経済

 経済が進化している。

 産業革命以来、モノを効率よく大量につくることで経済は成長した。だが、デジタル技術の進歩と普及で、富の源泉は、モノからデータや知識など形のない資産に移った。そんなデジタル時代の新しい経済、「ネオエコノミー」の実像とは?

見えざる資産、成長の源に

 フィンランドの首都ヘルシンキに住むイェッセ・ペウララ氏は1年前、愛車を売却。今は目的地への最適ルートに合わせて電車、レンタカー、シェア自転車など様々な移動手段を使いこなす。

 同氏の生活を変えたのは、移動手段を組み合わせて経路を提案するアプリ「Whim(ウィム)」。ヘルシンキ市民の9人に1人が使っている。

 車を持たない人が増えれば消費が減り、経済成長は鈍る。それが、これまでの常識だが、氏は「余計なお金がかからなくなり、生活も便利になった」と言う。豊かさの実感は確実に増した。

 「快適な移動」という豊かさを生むのは、車というモノの所有ではない。どんな乗り物がどこに、どれだけ、どんな状態にあるか。ばらばらで形のない情報をつなぐことで価値が生まれる。

 こうした情報や知識、アイデアといった形のない資産はすでに富の源泉の主役だ。米国、中国、日本の主要302社が持つ特許権やソフトウエアなど無形資産の規模は2007年、機械など有形資産を上回り、17年には4兆ドル(約440兆円)と有形資産の1.5倍になった。

「ムダ」排除が生む低温経済

 タイにあるアパレルのネット通販ポメロは、2018年末、利用者が指定したカフェなどに衣類を送り、「試着室」に変えるサービスを始めた。

 需要と供給の動きを見極めて流通の無駄を極力減らせば、大型店舗で大量販売するよりも、細かな需要にきめ細かく応じる方が収益につながる。米国の文明評論家、ジェレミー・リフキン氏は「ビッグデータを分析することで在庫を極限まで減らし、生産性を劇的に高められる」と語る。

 あり余るモノをつくり続け、大量に資源を消費してきた結果、人類は地球環境の破壊という負の遺産を膨らませた。経済から余計なモノをそぎ落とし、摩擦ゼロに近づけていけば、効率は高まり、社会の調和は増すだろう。

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