2020年1月号掲載

ゲノム革命がはじまる DNA全解析とクリスパーの衝撃

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著者紹介

概要

遺伝子レベルで相性の良い相手を紹介する「DNA婚活」など、様々な分野で遺伝情報に基づくサービスが広がっている。だが、その信頼性はどうなのか? 本書は、遺伝子検査からゲノム編集まで、最新動向を紹介しつつ、急速に進む「ゲノム革命」を解説。ゲノム技術が孕むリスクと可能性、倫理問題などについて言及する。

要約

ゲノムから何がわかるのか?

 「DNA婚活」という言葉を、聞いたことがあるだろうか?

 これは「男女の遺伝子レベルでの相性の良さをもとに、お見合いや交際をすすめるサービス」である。2013年頃からスイスやアメリカで広がり、日本でも現在、数社が同サービスを提供している。

 こうした会社では、紹介料などに加えて数万円の遺伝子検査料を払うと、DNAの相性を参考にしながら相手を紹介してくれる。

 実は、遺伝子の検査は以前から存在する。だが、それらは大学や病院などで、特定の病気に関する遺伝子を分析する医学的な検査である。

 これに対し、近年急速に利用者数を伸ばしている遺伝子検査は「一般消費者向け遺伝子検査」というもので、その頭文字をとって「DTC(Direct to Consumer)検査」と呼ばれる。病院や医師を介すことなく、直接、消費者に提供される遺伝子検査サービス、という意味だ。

DTCの始まり

 DTCの先駆けと言えるのは、2006年に米国で設立された「23andMe(トゥエンティスリー・アンド・ミー)」だ。同社は、一般消費者に向けてDTC商品を、当初は999ドル(10万円程度)でインターネット直販し始めた。

 この商品を購入したユーザーには、遺伝子検査キットが郵送されてくる。ユーザーは、キットに含まれるプラスチック製容器に自らの唾液を入れて返送する。この唾液に含まれるDNAを測定し、データを解析することで、様々な病気の発症リスク、あるいは目や髪の色、性格など身体的・精神的特徴、先祖に関する情報などが判明する。

ビッグデータ解析に活路

 23andMeは、当初順調にユーザー数を伸ばしていた。しかし2013年11月、米FDA(食品医薬品局)から警告を受けた。遺伝子検査キットは一種の医療機器と見なされるため、規制当局であるFDAから許認可を得なければならない。だが、同社は無許可でビジネスを行ってきたというのだ。

 そしてFDAは23andMeに対して、「遺伝子検査サービスを停止せよ」との行政命令を発動した。

 業務縮小に追い込まれた同社は、その後、新規事業の開拓に乗り出す。それはビッグデータ解析だ。同社はFDAから警告を受けた時点で、すでに50万人以上のユーザーを得ていた。この大量のDNAデータを解析すれば、遺伝子治療薬の開発など新規ビジネスに結びつく。同社は製薬大手やバイオ企業などと提携し、DNAデータとその解析サービスを提供するビジネスを開始した。

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