2019年10月号掲載

マネジャーのための 交渉の認知心理学 戦略的思考の処方箋

Original Title :Negotiating Rationally

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著者紹介

概要

合理的に交渉できる人とそうでない人。その差はどこにあるのか? 本書は、様々な事例を分析し、後者が陥りがちな意思決定の罠を明らかにした。初めにとった行動方針に深入りする。自分の利益は相手側の損失の上に成り立つと決め込む…。これらのエラーを避け、優れた交渉者になるための処方箋を説く。役立つ助言が満載だ。

要約

交渉における合理的思考の導入

 交渉を成功させる秘訣は、合理的、かつ効果的に交渉すること以外にはない。

 「合理的に交渉する」とは、最良の意思決定を行い自分の利益を最大化する、という意味だ。合理的な交渉とは、ただ合意に至ることではなく、最高の合意点に到達することである。

 だが、どんな経営者にも深く染み込んだ意思決定の偏向(バイアス)がある。そのため、目前のチャンスが見えなくなったり、交渉の持つ可能性を十分に引き出せなくなったりしている。

もう、どうにも止まらない

 例えば、次のケースを考えてみよう。

 事業家ロバート・キャンポーは、百貨店ブルーミングデールズを買収しようと、親会社のフェデレイティッド・デパートメント・ストアーズに敵対的TOB(株式公開買付け)を仕掛けたことがある。これに対抗してメイシーズも買収に乗り出し、両者の間で派手な買収劇が繰り広げられた。

 買収価格は上昇を続け、この買収競争の勝利がメイシーズの手に落ちんとした時、キャンポーは、メイシーズの高額オファーにさらに約5億ドル上乗せして逆襲した。この無理な行為がたたり、キャンポーは闘いには勝ったが、戦に負けた。その後、彼は破産したのである。

 これはよくある買収劇の話である。いかなる犠牲を払っても「勝ちたい」という欲望が、合理的な交渉戦略の策定にまさってしまうのだ。

 問題は、交渉の最後まで、最初に立てた行動方針にしがみついてしまうところにある。争うことが望ましい成果をもたらさないのが見え始めても、もう一歩進めれば勝てるはずだ、というささやかな可能性にしがみつく。かくして、悲劇的な結末が生じる。

意思決定に関する7つのバイアス

  • ①最初に何らかの行動方針を立てると、それが最大のメリットをもたらす選択肢でないことが明らかになってからも、どうしようもなく深入りしてしまうこと(前述のキャンポーの事例は、これに該当する)。
  • ②自分の獲得分は相手側の損失の上に成り立つと決め込み、双方にメリットをもたらすようなトレード・オフ(交換取引)の機会を逸すること。
  • ③最初の提示条件のような、不適切な情報に基づいた自分の判断に固執すること。
  • ④情報がどんな形でもたらされたかに、過剰反応すること。
  • ⑤使いやすい情報に依存し過ぎ、もっと関連の深そうな情報をないがしろにすること。
  • ⑥相手側の視点に立つことで学べるはずのことを考慮しないこと。
  • ⑦自分に有利な結果になるはずだと、自信過剰になること。

パイの大きさは決まっている?

 ②のバイアスに関する事例を見てみよう。

 ある大企業C社が、P社を友好的に買収したいと考えている。両社とも、P社がC社の傘下に収まるのは有益だと認識している。それなのに、双方ともこの買収を完了できなかった。

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