2019年9月号掲載
カスタマーサクセスとは何か 日本企業にこそ必要な「これからの顧客との付き合い方」
著者紹介
概要
「カスタマーサクセス」は、米国生まれの新たな概念。顧客にモノではなく、“成功”を届けるというもので、デジタル時代に主流となるお得意様戦略だ。だが、日本企業の対応は鈍い。従来のモノ売り切りモデルが行き詰まる中、日本企業にこそ必須の重要概念だと言う著者が、具体例を挙げつつ、その本質、成功要因を説く。
要約
リテンションモデルの登場
「カスタマーサクセス」 ―― 。
これは、デジタル時代を生き抜くあらゆる企業にとって必須の概念である。
デジタル時代の今日、強い競争力を持つ事業がある。例えば、アマゾン。同社が提供する「アマゾンプライム」は有料会員サービスだが、多くの会員を集めている。
また、ライドシェアサービスのウーバー。日本では身近でないが、車を持たずに米国シリコンバレーを訪れたら、それ無くして過ごせないと断言できるほど普及したサービスである。
そして、アップル。iPad、iPhoneなどのハードウェアだけでなく、クラウドサービスやアップストアの各種アプリも提供している。
これら3社の事業に共通するのは何か?
それは、デジタル技術を活用した画期的なプロダクトを提供し、利用者がそれ無しでは生活できないという域の存在になっている点だ。
カスタマーを虜(トリコ)にするリテンションモデル
それぞれのビジネスモデルを見てみよう。
アマゾンプライムは、会費を定期的に支払えばプライム会員サービスをいくらでも利用できる。いわゆる「サブスクリプションモデル」(会員サービスを受ける利用期間に対し、固定制ないし従量制の利用料を支払う課金制度)だ。
ウーバーは、現時点でサブスクリプションモデルではない。利用者は乗車ごとに利用料を払う。しかし、一度使えば日常的に使う人がほとんどだ。
一般消費者向けのアップルのサービスは、一部を除けばサブスクリプションモデルではない。何よりアップルの収益の8割超はハードウェアの売上だ。新しいiPhoneが登場するたびに、列をなして購入するファンが多い。