2019年8月号掲載
グーグルが消える日 Life after Google
Original Title :LIFE AFTER GOOGLE:The Fall of Big Data and the Rise of the Blockchain Economy
著者紹介
概要
インターネット上で、様々なサービスを「無料」で提供するグーグル。しかし、同社の戦略は「嘘」や「矛盾」をはらんでおり、セキュリティにも致命的な問題がある ―― 。米国で“テクノロジーの予言者”と評される経済学者が、グーグルのシステムの限界を指摘。それに代わる、セキュリティ第一の新たなシステムを展望する。
要約
セキュリティー崩壊の危機
「シンギュラリティ(コンピュータが人間の知能を超える段階)の瞬間が急速に近づいており、クラウドのスーパーコンピュータの能力が、人間の能力を大幅に上回ろうとしている」
多くの著名人が、このように口を揃える。
その一方で、インターネット上のセキュリティーは、明らかな崩壊を迎えている。
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セキュリティーの専門家アシーム・チャンドナは、「セキュリティーの崩壊はユーザー側に問題がある」と言う。人間は、マルウエア(悪意のあるソフトウエア)のメッセージに簡単に騙される。そのため、「ハッキング対策は、決して終わりのない戦いになる」と警告している。
金融や保険をはじめとする多くの業界は、すでにネットワークヘの接続を遮断している。企業の安全性を保障する方法は、「大切なものはネットに接続しない」という戒めしかない。
現在のセキュリティーやプライバシーの危機的状況は、既存のコンピュータやネットワークの枠組みの中だけでは解決できない。
セキュリティーを強化するためには、パスワードや不正アクセス検知機能、マルウエアの予防策、ソフトウエアの修正だけでは不十分である。セキュリティーは、あらゆるサービスの基本であり、あらゆる取引で無視できない。
そもそも、インターネットがすべてのサービスを「無料」で提供していたのは、インターネットが商取引の手段ではなかったからだ。ウェブサイトの閲覧やメールの送信などに使われている間は、セキュリティーなど必要なかった。
ところが、21世紀になって、アマゾンやアップルなど大手IT企業が台頭すると、インターネットは大々的な商取引の場となる。その結果、業界全体が「クラウド」に向かった。
だが、アップルのiTunesやグーグルクラウドなど、こうした中央集権化した会員システムにデータを集約するには、セキュリティー費用がかかる。業界としては、データの集約によって安全性を探求したにもかかわらず、向上していない。