繁栄のパラドクス

Original Title :THE PROSPERITY PARADOX

イノベーション社会・政治
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著者紹介

概要

『イノベーションのジレンマ』で知られる世界屈指の経営思想家が、貧しい国に長期的な繁栄をもたらす「市場創造型イノベーション」を説く。これは、それまでモノがないか、高くて買えなかった人たち ――“無消費者”に向けた新規の市場をつくり、安く届けようというもの。貧困という問題に、新しい視点を提供する書だ。

要約

繁栄のパラドクスとは

 通りには腹を空かせた子ども、清潔な水も下水処理もないスラム街…。世界銀行によると、今も7億5000万人が極度の貧困にある。

 こうした姿に私たちは胸を痛め、何とか助けたいと思う。だが、貧困国を直接支援しようとする試みは、期待したほどの成果は挙がっていない。資金を投じれば、一時的には問題が緩和されたように見える。しかし、根本的な解決ではない。

 では、どうすべきか? 視点を変えてはどうだろう。目に見える貧困の解消ではなく、持続する繁栄を創出する方に力を向けるのだ。そこには思いがけないほど大きな機会が眠っている ―― 。

不便こそが、大きな可能性

 かつてブリティッシュ・テレコム社で技術責任者を務めたモ・イブラヒムは、1990年代にアフリカに携帯電話会社をつくろうと思い立った。

 アフリカ大陸には54の国があり、アメリカの面積の3倍以上の大地に、10億人以上が住む。ほとんどの地域には、有線電話のインフラも、携帯電話会社の運用に必要な基地局もない。

 アフリカのビジネスチャンスを語ろうとすると、誰もが貧困の深刻さ、インフラの欠如、政情の不安定を挙げ、ビジネス以前の現実を指摘した。しかし、イブラヒムは違った。貧困ではなく機会を見た。

 「故郷から離れた場所に住んでいる人が、母親に会って話そうと思ったら7日間かかる。今すぐ母親と話せる道具があったら、どれだけありがたいか。どれだけの金と時間の節約になるだろう」

 イブラヒムの関心は、地域の人たちが強いられている不便に向いていた。彼にとって、その不便こそが莫大な可能性だった。

「無消費」の中に市場を見つける

 不便は「無消費」の表れであることが多い。無消費とはすなわち、潜在的な消費者が生活の中のある部分を進歩させたいと切望しながら、それに応えるプロダクトを買うだけの余裕がない、あるいは存在を知らないといった状況を指す。

 その場合、潜在的な消費者はそのプロダクトなしで我慢するか、間に合わせの代替策を編み出すことになり、不便は続く。この状態は、ビジネスチャンスを評価する指標には表れない。

 しかしイブラヒムは、無消費の中に市場を「創造する」チャンスを見た。彼はアフリカ全土のモバイル通信網の構築を目指して、セルテル社を創設した。携帯電話のインフラを構築することは、気の遠くなる事業だった。行政府にも銀行にも頼れない。資金調達は困難を極めた。

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