2020年10月号掲載
ニューノーマル時代のビジネス革命
著者紹介
概要
今、世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス。今後、我々はこのウイルスと共生し、従来とは異なる新しい日常を生きていかねばならない。本書は、そんな「ニューノーマル」におけるビジネスコンセプトと事業機会を、4つのキーワードを軸に解説。不可逆な変化の中で戦略をどう最適化していくか、そのヒントが示された1冊だ。
要約
トレーサビリティー
新型コロナウイルスの感染拡大は、まだ世界的に収まる気配を見せていない。今回の感染拡大は、WHO(世界保健機関)のパンデミック宣言が10年ぶりであることを考えると、実は10年に1度は起きてもおかしくない出来事だといえる。
従って我々は、新型コロナウイルスのような未知のウイルスや菌類との共生を含め、これまで非日常と考えていたような災いが起こることを前提とした社会システムを構築し、企業活動や日々の生活を送る必要がある。
では、こうした「ニューノーマル=これまでの日常とは異なる新しい日常」において、企業はどんな戦略をとればいいのか。
本書は、ニューノーマルにおけるビジネスコンセプトと事業機会を4つのキーワードで整理した。
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- ①Traceability(トレーサビリティー)
- ②Flexibility(フレキシビリティー)
- ③Mixed Reality(ミックスドリアリティー)
- ④Diversity(ダイバーシティー)
これらを順に見ていこう。
トレーサビリティーとは?
新型コロナウイルス対策では、いわゆる「クラスター(感染者集団)」潰しが欠かせない。感染者と濃厚接触者を特定し、隔離できれば、感染拡大を防ぐことができる。大事なのは、濃厚接触者の「追跡可能性=トレーサビリティー」である。
スポーツ観戦やコンサートは、環境として「密」ではあるが、チケットがオンライン販売であれば来場者を把握できる。一方、参加自由なイベントで来場者を把握できなければ、後に感染者が判明しても連絡の取りようがない。Withコロナ、アフターコロナの時代は、密か否かだけでなく、人のトレーサビリティーが重要になる。
ICTを活用した感染者追跡
新型コロナは、パンデミック対応に本格的にICT(情報通信技術)が活用された世界初の事例となった。例えば、スマホを活用した感染者追跡アプリ。先行したのは、中国やシンガポール、インドなど国家主導でデータ管理を進める国だ。韓国でも感染者の行動を捕捉するため、携帯電話データ、クレジットカード利用履歴、防犯カメラ映像などを活用している。
このように、全国民の行動を管理する方向で考えることも、パンデミック状況下では議論すべきだ。しかし、自由社会で生きる我々にとっては、個人の行動の自由や匿名性も確保した上で、情報銀行などでID化された個人の行動を保管し、リスクの大きさに応じて後からトレースする仕組みなどが現実解となるだろう。
モノのトレーサビリティーも進む
個人の行動に加え、モノのトレーサビリティーもニューノーマル下の事業運営では重要性を増す。
新型コロナ禍により、社会のリソースのID化と、それに伴うサプライチェーンマネジメントの最適化が急務であることが露呈した。マスク不足も深刻さを極めたが、在庫は十分にあるはずのトイレットペーパー騒動においては、石油ショックの頃と変わらない光景に驚かされた。現代のテクノロジーでは、生産から在庫、流通まできめ細かい管理ができるはずだが、この状況である。