2019年2月号掲載

「縮み」志向の日本人

社会・政治文化・思想・歴史
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著者紹介

概要

日本文化の特質とは? 日本人の考え方は、欧米など他国の人と何がどう違うのか? 古くから、日本人は小さいものに美を認め、何事も縮めようとする「縮み志向」だったと語る韓国の文芸評論家が、短歌や小説、生活様式などから、その特質を読み解く。外国人ならではの視点がキラリと光る、「日本文化論」の名著である。

要約

「縮み志向」とは何か

 古くから、日本人の意識の底には、何事も縮めようとする「縮み志向」があった ―― 。

入れ子型 ―― 込める

  東海の小島の磯の白砂に

  われ泣きぬれて

  蟹とたはむる

 石川啄木のこの短歌は、韓国人にも広く知られている。一人ぼっちの悲しみは、何も日本人特有の感情とはいえない。それなのに、絶対に韓国の詩にはなり得ない日本人の詩という感じがする。

 それは、この歌の構文上の特性のため、といえる。「東海の小島の磯の白砂に…」のくだりには、何と助詞の「の」が三重に重なっている。世界で最も短い詩形式である俳句を生んだ民族が、どうしてこのような構文を使ったのか。

 実は、「の」は、あらゆる考えや形象を縮小させる媒介語的な役割を果たしている。

 まず、広々とした無限大の「東海」が「の」によって「小島」に縮まってくる。「小島」は「磯」に、「磯」はさらに「白砂」に縮まり、しまいには一点にすぎない「蟹」の甲羅にまで凝縮される。それがまた「われ泣きぬれて…」だから、あの広い東海は結局、涙一滴になってしまうのだ。

 このような、「の」の繰り返しで作られる縮み志向は、実用的な器物にもあらわれている。日本人の愛用した、入れ子文化がそうだ。

 箱の中に箱が入り、さらにその箱の中にそれより小さい箱が入ってゆく。だんだん小さくして順に中に入れれば、「1つの箱」に収められる。それが日本でよく見られる入れ子箱である。

 箱だけではない。大小が順に入るようしつらえた入れ子鍋や、入れ子鉢もある。日本人は昔から、何でも入れ子仕立てに縮めようとする発想を持っていたのである。

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