2019年1月号掲載

「ごきぶりホイホイ」生みの親 大塚正富のヒット塾

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概要

大塚正富・アース製薬(株)元社長は、「ごきぶりホイホイ」をはじめ、数々のロングセラー商品を生み続けてきた。本書は、このヒットメーカーの足跡を、本人や関係者への取材をもとに、丹念にたどる。また、マーケティングの視点から、氏の思考・行動を徹底分析し、ヒット商品を生み出す上で何が必要なのかを探っていく。

要約

創造的思考の旅路へ

 ゴキブリを粘着剤で捕まえ、紙の箱ごと簡単に捨てられる「ごきぶりホイホイ」は、1973年に発売されると、爆発的な人気を呼んだ。

 この商品を生み出したのは、アース製薬元社長、大塚正富氏である。

 これだけではない。炭酸入り栄養ドリンクの先駆けとなった「オロナミンC」、日本初の液体式蚊取り器「アースノーマット」なども自身が開発に携わり、大ヒットを飛ばした商品だ。

正富氏の能力を引き出した、長兄の存在

 正富氏は、大塚製薬など大塚グループの発祥企業である大塚製薬工場を創立した大塚武三郎氏の五男として徳島・鳴門に生まれた。長兄は、大塚製薬工場の経営を受け継ぎ、後に大塚グループの総帥となった正士氏である。

 大学で化学を学んだ後、1953年に正富氏は同工場の研究室に入る。氏の研究者としての能力を最大限に引き出し、商品を通じて大衆の心をつかめてこそ技術は生きると教えたのは、正士氏だった。正富氏にとって、売れる商品づくりの揺るぎない確信は、長兄との経験と共に培われたものだ。

 そして正富氏は1970年、経営不振に陥ったアース製薬に転じ、社長兼開発責任者として奮闘した。

既存商品を突き放し、可能な限り否定する

 正富氏の売れる商品づくりの考え方は、マーケティングの定石である、STP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)とリサーチを徹底したものとは違う。

 STP型のマーケティングは、まず市場を細分化し、その中からリサーチによって有望市場を選ぶ。さらにリサーチを重ねて顧客を理解し、最も満足し得る製品・サービスを開発する。これは顧客満足を高めるには有効だが、従来の延長線上の思考に陥りやすい。そのため、顧客の創造や従来とは異なる製品・サービスの創造には限界がある。

 敢えて既存の商品を突き放して、可能な限り否定するようにマインドをリセットし、大きく視点を変えてみる。アイデアは素早くプロトタイプにして実験を重ね、問題点を修正する。

 さらに市場導入にあたっては、購入後に実際に害虫を退治できるかをよく見ている顧客が「あ、なるほど! 捕れている」と膝をたたいて価値を実感し、感動できるストーリーをつくる。

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