2018年2月号掲載

「忖度」の構造 空気を読みすぎる部下、責任を取らない上司

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著者紹介

概要

国会での森友学園問題などの論議を機に、国民の関心を集めるようになったのが「忖度」である。本人の意に反し、「上」の意向を忖度して動かざるを得ない者、「下」が勝手に忖度して動いたため、窮地に追い込まれる者…。こうした日本社会の病理ともいえる問題の構造を解明し、“忖度社会”を生き抜くための処方箋を示す。

要約

世の中を動かす「忖度」の正体

 「忖度」という言葉に注目が集まっている。

 きっかけは、安倍政権を揺るがした森友学園問題に絡む籠池泰典理事長(当時)の記者会見だ。森友学園問題とは、籠池氏が小学校建設のために国有地を購入するにあたり、当初9億円といわれた用地を1億円で手に入れた事件のことである。

 なぜ8億円もの値引きが行われたのか。

 籠池氏は、値引き交渉で安倍総理夫人の名前を出したところ、近畿財務局の態度が変わり、大幅な値引きが実現したのだと説明した。

 そこに浮上したのが、忖度疑惑である。安倍総理や総理夫人が直接口利きしたのではなくても、総理夫人の名前が出たことで、官僚側が忖度をした、つまり言われなくても自ら気をきかせて大幅な値引きをしたのではないか、というわけだ。

 上の例のように、権力をもつ側が圧力をかけなくても、権力を恐れる側が自己規制したり、権力側に有利になるように物事を進めたりすること。これが「忖度」というものである。

 当然、このような忖度の構造を悪用する権力者も少なくない。極端な場合、権力者はただ「よろしく!」と言うだけで、物事を自分に有利なように動かせる。権力者を恐れる人物は、「よろしく!」の含意を、想像力を働かせて受け止め、その意に沿うべく努力する。

 だが、その場では、そのように汲み取るしかないような空気が漂っていたのは事実のはずだ。ただし、空気は何も証拠を残さない。

 このように、権力者はさりげなく匂わすことで、自分の身を危険にさらすことなしに、うまく人を動かすのである。

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