2015年12月号掲載

「世間」とは何か

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著者紹介

概要

「そんなことでは世間に通用しない」「渡る世間に鬼はなし」などと、私たちは普段何気なく“世間”を口にする。だが、言葉の意味を正しく捉えている人は少ない。世間とは何か、社会とどう違うのか、長い歴史の中でどう捉えられてきたのか。西洋の社会と個人を探究してきた歴史家が、世間の本質を解き明かす。日本社会の独特な構造を知る上で、参考になる1冊だ。

要約

日本人と「世間」

 私たちの誰もが、「世間」という言葉を使っている。それにもかかわらず、世間とは何かと聞けばきちんと答えられる人はいない。世間を「社会」と同じものだと考えている人もいるらしい。しかし世間は社会とは違う。

 西欧では社会という時、個人が前提となる。個人は譲り渡すことのできない尊厳をもっているとされ、その個人が集まって社会をつくるとみなされている。従って、個人の意思に基づいてその社会のあり方も決まる。

 一方、日本では、いまだ個人に尊厳があるということは十分に認められているわけではない。しかも世間は個人の意思によってつくられるとは考えられていない。世間は所与とみなされている。

 親が子供に、「日本の社会では…」と話すことはそう多くはないだろう。しかし「そんなことでは世間には通用しないよ」などと言うことはよくある。「渡る世間に鬼はなし」「世間の口に戸はたてられぬ」などの諺を知らない人もいない。

 私たちは、誰もが世間を常に意識しながら生きているのである。

理屈を越えたもの

 世間は実態であり、私たちは皆、世間の目を気にして生きている。あえていえば、日本人は皆、世間から相手にされなくなることを恐れ、世間から排除されないように常に言動に気をつけている。

 親と子の葛藤にもこの問題が深く関わっている。子供はまだ世間を知らない。自分の夢が実現できると思っている。世間の恐さを知る親は、自分が苦労した世間との葛藤を子供にはさせたくない。親と子の葛藤の多くは、この種の問題なのである。

 親が子供に世間について教えればよいのだが、親自身、世間を対象化して教えることができない。何故なら親は自分の経験から自分が関わった世間を知っているにすぎず、そこに普遍的な観点を持ち込むことができないからだ。

世間の掟

 ここで、世間を定義しておこう。

 世間とは個人個人を結ぶ関係の環であり、個人個人を強固な絆で結び付けている。

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