2014年10月号掲載

噓と絶望の生命科学

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著者紹介

概要

血液の細胞を弱酸につけると「万能細胞」ができる ―― 。世紀の大発見と騒がれたSTAP細胞の研究は、その後、論文不正が疑われ、世間に衝撃を与えた。しかし、元研究者の著者によれば、今回の問題は“氷山の一角”。バイオ研究の世界がいかに問題だらけか、不正が起こる背景をはじめ、若手研究者の奴隷化、ブラック企業化する大学院等々、実態を報告する。

要約

「奴隷」が行うバイオ研究

 その昔、生物学は殿様がするものだった。

 私が卒業した東京大学理学部生物学科動物学専攻の名簿を遡ると、大名や貴族の子孫の名が出てくる。また、皇室の方々も生物学を研究している。

 では、なぜ生物学か。生物は多様だから、研究テーマに限りがなく、競争も少ないので自分のペースでできる。数学や物理学のように特殊な才能を必要としない、というのも大きいかもしれない。

 理由はともあれ、日本の生物学は、貴族が余暇で行うような学問だったのだ。ところが ―― 。

生物学がバイオになった日

 1953年。若き分子生物学者ジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックはDNAの構造の謎に取り組んでいた。そして試行錯誤の上、たった2ページの論文をネイチャーに発表。このDNA構造の発見から、分子生物学はスタートした。

 その後の分子生物学の研究は目覚ましい。生命現象の解明という基礎科学にとどまらず、がんなど病気の発生のメカニズムの解明、薬の開発、食物の増産など様々な分野で不可欠なものとなる。生物学のあらゆる分野に分子生物学が入り込み、生物学はもはや昔の生物学ではなくなった。

 こうした状況を踏まえ、現在の生物学は「生命科学」と呼ばれる。生命科学に含まれる様々な分野は、バイオテクノロジー、バイオニクスなど「バイオ~」と呼ばれることが多い。

 バイオ研究は期待と欲望とカネを吸い込み、肥大化、競争が激化した。そして、大学はもはや自分の興味や関心だけで研究する場ではなくなった。

殿様から「奴隷」へ

 バイオ研究では必ずと言っていいほど使う道具で、正式名称は「マイクロピペット」。細長い形態をしており、長さは箸くらい。片手で握って、親指でボタンを押し、微量な試薬を混ぜたりする。

 バイオ研究では、研究者が朝から晩までピペットを握る。そんな大学院生や若手研究者のことを揶揄して「ピペド」と呼ぶことがある。「ピペット土方」もしくは「ピペット奴隷」の略称だ。

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