2012年3月号掲載

官邸から見た原発事故の真実 これから始まる真の危機

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著者紹介

概要

原子力の専門家であり、内閣官房参与として福島原発事故の対策に取り組んだ田坂広志氏が、この事故を機に、今後浮上してくる諸問題を指摘した。原子力発電所の安全性への疑問、放射性廃棄物の最終処分への疑問、原子力発電のコストへの疑問…。失墜した原子力行政の信頼を回復するため、政府が答えるべき問題を「国民の7つの疑問」として提示する。

要約

懸念される「楽観的空気」

 2011年3月11日に起こった福島第一原子力発電所の事故。この事故を受け、3月29日、私は原子力工学の専門家として内閣官房参与に就任、9月までの5カ月間、緊急対策に取り組んだ。

 あの原発事故直後の深刻な状況を体験した人間として思うこと。それは、事故が突き付けた問題を見つめることを忘れてはならないということだ。

「首都圏3000万人の避難」という最悪シナリオ

 現在、政界、財界、官界のリーダーの間に、「根拠のない楽観的空気」が広がっている。

 「原発事故は、無事、収束に向かっている。だから他の原発については、安全性を確認したら速やかに再稼働を行おう」という楽観的空気だ。

 だが、この国の針路を定める立場の人たちに、深く理解しておいてもらいたいことがある。それは、「今回の福島原発事故は、どこまで深刻な事故だったのか」ということである。

 私が官邸に入った時点では、まだ原子炉と核燃料を水で冷却する有効な方法がなかった。そして、事態が悪化した場合に何が起こるか、いくつかの研究機関がシミュレーション計算をしていた。

 結果は深刻なものであった。それは、大量の放射能が大気中に放出され、もしそれが東京方向に風で運ばれると、最悪の場合、首都圏までかなり高い放射能汚染の地域が生じるというものだった。

 すなわち、3000万人が住む首都圏まで避難区域になる可能性があったわけだ。

楽観的空気が生み出す「最悪の問題」

 根拠のない楽観的空気が広がると、最悪の問題が起こる。それは、「信頼」の喪失である。

 例えば、政府が国民に対して「安全です」と言っても、「安全だと嘘を言っているのではないか」といった不信と疑心の社会心理が広がる。

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