2011年1月号掲載

携帯電磁波の人体影響

携帯電磁波の人体影響 ネット書店で購入
閉じる

ネット書店へのリンクにはアフィリエイトプログラムを利用しています。

※『TOPPOINT』にお申し込みいただき「月刊誌会員」にご登録いただくと、ご利用いただけます。

※最新号以前に掲載の要約をご覧いただくには、別途「月刊誌プラス会員」のお申し込みが必要です。

著者紹介

概要

携帯電話の発する電磁波が、脳腫瘍などの病気になるリスクを高める ―― 。近年、そんな研究結果が、欧州の研究者により発表された。米国では、実際に脳腫瘍を発症したとして、携帯電話会社を訴える人が現れており、欧州では、携帯電話の使用を規制する動きも出始めている。本書では、こうした携帯電磁波の健康被害を巡る最新事情をレポートする。

要約

ついに米国議会が動き出した

 欧米では最近、携帯電話が発する電磁波(以下、携帯電磁波)の健康影響を懸念する医師や研究者が増えている。

携帯電話関連で初めての公聴会

 そんな中、2008年9月、米国議会下院で、「携帯電話使用と腫瘍―科学者の見解」と題する、携帯電磁波に焦点を当てた初の公聴会が開催された。

 公聴会では最初に、「長期にわたる携帯電話使用が原因で脳腫瘍になった」とする被害者が証言し、その後、「携帯電話使用と脳腫瘍の関連はあり得る」とする研究者と、「関連はない」とする研究者が個々に見解を述べ、議論を行った。

 被害者は、カリフォルニア州で不動産会社を営むアラン・マークスさん。脳腫瘍で療養中の彼に代わり、妻のエレンさんが証言した。

 エレンさんによれば、アランさんは約20年前から携帯電話を使い始めた。平均通話時間は毎日約1時間。不動産業という仕事柄、携帯電話を常に持ち歩き、耳に押し当てて話していたという。

 大らかで温厚な人柄だったが、数年前から訳のわからないことを言い始めるようになった。そして、08年5月に脳腫瘍と診断された。

研究者の間でなぜ主張が異なるのか

 しかし、エレンさんの後に証言した米国立がん研究所(NCI)のロバート・フーバー博士は、「携帯電話使用と腫瘍の発生に関連があるとは思えない」と主張した。

 1987年から2005年の間に米国の携帯電話の使用は約10倍に増えたが、この間、脳腫瘍などが増えたという状況はみられなかったという。

 携帯電話の電磁波が動物や人間の細胞に悪影響を及ぼすことを示す研究調査はたくさんある、だから早めに予防対策をとるべき、と提言したのだ。

 研究者同士で、なぜこうした相違が起こるのか。

この本の要約を読んだ方は、
他にこんな本にも興味を持たれています。

スマホ脳

アンデシュ・ハンセン 新潮社(新潮新書)

未来の医療年表 10年後の病気と健康のこと

奥 真也 講談社(講談社現代新書)

新型コロナの科学 パンデミック、そして共生の未来へ

黒木登志夫 中央公論新社(中公新書)

いのちを“つくって”もいいですか? 生命科学のジレンマを考える哲学講義

島薗 進 NHK出版